わたしはまだ頑張り方を知らない。
だけど、知らないなりに、精一杯頑張りたい。手探りで模索しながら、少しずつ変わっていきたい。
そう思えたのは、この勇気をくれた、環くんのおかげだよ。
「わたし、学校に戻ろうと思う」
唐突にそう決心しても、環くんは「そっか」と平然としていた。春めいた季節感に負けじと、穏やかに破顔している。
「怖くない?」
「……正直、ものすごく怖い」
今も、わたしの中には大きな不安がひしめいてる。今にも爆発しそうで、ぐぐっと奥底に抑え込むことしかできない。
覚悟なんて大層なもの、持ち合わせていない。
恐怖心とちっぽけな勇気しか、わたしにはないのかもしれない。いつかこの勇気すら、恐怖心に食べられてしまう可能性だってある。
「それでも、前に進もうって決めたの」
逃げ出した時間を、無駄にしたくない。
途中何度も立ち止まりながら、着実に一歩ずつ進んでいく。その途中で、わたしだけの頑張り方を探していきたい。
そうやって、今日流した涙を、これからの希望につなげていく。
誰にも一縷の光は必ず在ると信じて。
「じゃあ、戻ろうか」
「うん」
迷いなく頷けたときようやく、お母さんとお父さんの死と、自分の左腕を受け入れられた気がした。
何気なく見上げた空は、雲一つない、晴天だった。
ムラのない青色は、遠くへ行っても褪せることはない。
赤らんだ目元に沁みるあの青ならば、純白に荒んでも、わたしのことを照らしてくれそうだ。