最近の医療技術はすごいな。動かない状態から完治させることができるんだ。ここまで発展していたなんて知らなかった。
『ただ』
葉上先生は、未だに浮かない顔をしていた。
『この手術をすると、感覚がなくなるんだ』
……そうか。
違和感の正体は、それだったんだ。
左袖をまくり、恐る恐る右手で左の手首をわざと強く掴んだ。ぎこちない強さだけじゃ確信できなかったから、右の爪を全て立てた。
『本当だ……』
右手には、冷たさが伝わってくる。
しかし左手には、温もりも痛みも、感じられない。
本当に、感覚がなくなってる。
『それに、手術の内容上、左腕に血液は通わない』
『感覚だけじゃなくて、血も流れないんですか?』
『ああ』
自分の左側を、気味悪く感じた。
義手だったら、引っかかりを抱いても、割り切って考えられたのかもしれない。
左腕がなくなっていたら、慣れるまで時間はかかるだろうけれど、一生懸命左腕のない自分を受け入れようとしたかもしれない。
でも、この左腕は、間違いなくわたしのもので。
見た目は変わらないのに、感覚が欠落している。
左手でベッドのシーツを触っても、触れてることしかわからない。どんな質なのか、どんな温度なのか、感じ取れない。
まるで、“ヒト”じゃない、バケモノの腕。
しかも、その腕が利き手のほうだなんて、神様は意地悪だ。