漂う静寂を切ったのは、葉上先生だった。



『莉子ちゃん、落ち着いて聞いてほしい』


『葉上、先生?』



どうか、どうか。

頭に浮かんだ最悪なものとは、正反対の真実を教えて。


葉上先生はいやに真剣な顔つきで、どうしてもわたしの希望は叶わない予感がした。そして、その予感はきっと、不運にも的中してしまう。



『莉子ちゃんたちは、山の途中で雪崩に遭ったんだ』



あの音は、山に降り積もった雪が崩れる音だったんだ。音の重厚さから鑑みるに、相当な雪の量が落ちてきたに違いない。


雪崩がわたしたちを乗せていた車を巻き込んで……それで?

それで、どうなったの?



『雪崩がおさまって、発見したときにはもう……』



その言い方じゃ、まるで……。


ひと呼吸置いたあと、葉上先生は軽く息を吸って、わたしを見据えた。



『ご両親は、亡くなっていた』



知りたくなかった最悪な真実が、耳の奥でこだまする。何度も何度もリピート再生されて、わたしの中に現実を堕とした。



お母さんとお父さんが……死んだ?

本当に?


もう、会えないの?



涙が、こみ上げる。

けれど、目の渕から流れることはない。あふれるだけあふれて、枯れていく。



『そんなのウソだっ!』



信じたくない。


だって、ついさっきまで一緒にいたんだよ?


クリスマス楽しみだね、って。
プレゼント何かな、って。


笑って過ごしていたのに。今年もまたクリスマスパーティーをするはずだったのに、どうして。

信じられないよ。



『お母さんとお父さんが死んだなんて、ウソに決まってる!』



たまらず左腕を振り上げて、ドンッ、と勢いよくベッドを叩いた。ギシリとベッドのスプリングが軋む。



……あ、れ?


薄っぺらかったはずの違和感が、急激に存在感を出し始めた。

なんか、変だ。