目を覚ますと、一番最初に白い天井が視界を埋め尽くした。
独特の匂いが、鼻をかすめる。ツンとして、鼻の奥に匂いが残る。
なんでだろう。
なんだか体が重たくてダルい。
『莉子ちゃん!目が覚めたのかい?』
横から声がして顔を向けた。
そこには、おばあちゃんとおじいちゃんがいた。
『わしらが誰だかわかるかい?』
どうしておばあちゃんは、わかりきったことを訊くのだろう。
疑問に思いながらも、気力なく乾いた唇を動かす。
『おばあちゃんとおじいちゃん、でしょ?』
おばあちゃんとおじいちゃんは、ほっと肩を撫で下ろした。
その反応にさらに疑念を募らせる。
『莉子ちゃんはね、三日も眠り続けていたんだよ』
『目が覚めて、本当によかった』
三日も?
どうりで体がしんどいはずだ。
それにしても……。
『ここ、どこ?』
ぐるりと、周りを見渡してみる。
わたしが横になっているベッドが一つだけある、個室のようだけど。
『ここは病院だよ』
たった今この部屋に入って来た白衣の人が、おばあちゃんとおじいちゃんの代わりに答えてくれた。
『誰、ですか……?』
『はじめまして、葉上と申します。四十歳、独身。よろしく、矢崎莉子ちゃん』
どんどんフレンドリーな口調になっていった葉上先生の自己紹介。つっこみたい箇所が多い。
よろしくって、どういうこと?
状況に追いつけない中、『はじめまして』だけを返した。
『ちなみに、君の担当医だ』
担当医?
当惑を隠せないわたしに、葉上先生が近寄った。