あれは、わたしの左腕がまだ“ヒト”だった、去年のクリスマスイブ。


その日は、しんしんと雪が降っていた。




学校は冬休みに入った。


長期休みが始まったばかり、しかも明日はクリスマスだというのに、現在わたしは家にはいない。お母さんとお父さんと一緒に、車で父方の祖父母の家――おばあちゃんとおじいちゃんの元へ向かっていた。



二学期の通知表の評価は、まあまあだった。可も不可もない。


そんな反応のしづらい通知表をカバンの中に入れているのは、おばあちゃんとおじいちゃんが毎年わたしの頑張りを見たがるからだ。



『今年はホワイトクリスマスだな』



お父さんが山道を運転しながら、曇った窓ガラスの向こう側を覗き見る。



毎年、クリスマスは父方の祖父母の家で、年末は母方の祖父母の家で過ごすと決まっている。


この時期は、普段住んでいる地域ではあまり見られない雪景色を、毎年眺められる。しかし今年は、今までより雪の勢いが荒々しく感じた。



『お母さん!』


『なあに?』


『今年のクリスマスプレゼント、何?教えて!』


『それはサンタさんしかわからないわ』


『もうっ!子ども扱いしないでよ』



家族団らんで楽しむ、ホワイトクリスマス。

みんな楽しみにしていた。
大きなクリスマスツリーを飾って、こたつの中に足を入れて暖まりながら、クリスマスパーティーをする。


当たり前の幸せが、そこには在った。



今年のクリスマスプレゼントは何かな、なんて胸を高鳴らせている間にも、雪はいっそう激しくなっていく。


次第に風まで吹き出した。



寒さがより際立ち、冷たい両の手のひらをこすり合わせた。


息をはあっと吹きかけて、温める。吐いた息は、白く染まっていた。

熱は一瞬で冷めて、指先を青白く凍らせた。