翌朝。




登校中も学校に着いてからも、いつもより周りからの視線が鋭く、私を卑しめた。


下駄箱で靴を履き替えている間も、多くの目がジロジロとこちらを凝視している。



昨日、噂が本当だと裏付けるような出来事があったからだろうか。

いや、絶対そうだ。


だから、こんなにも黒い目が、わたしを追い詰めるんだ。



「気持ち悪っ」



遠巻きにわたしを窺っていた誰かの声が、静かな廊下によく反響した。


その声は徐々に周囲の疑念や敵意を煽り、ひとつまたひとつと穢れた声が増えていく。



確実にわたしに対しての悪口だ。

ここまで直球なのは初めてで、困惑を隠せない。



ダメ。気にしちゃダメだ。


おぼつかない足で、廊下を歩いた。



絆創膏だらけの右側も、異常な左側も、醜くて不気味だと思われてるのかな。

わたしの存在自体、否定されたらどうしよう。


悪意ある眼差しを送られるたび、前に進むのが怖くなっていく。


この道で合っているのか、進んでもいいのか、不安でたまらなくなる。




教室までの道のりが、やけに長く感じた。


ようやく教室の前に着いた。扉に手をかけようとした、そのとき。



「あいつ、今日休みかな?」



クラスの男子の刺々しい口振りが耳に入って、咄嗟に手を止めた。続けて嘲笑も聞こえて、右の指先から冷たくなっていく。



あいつって……わたしのこと?

確証なんてないのに、そんな気がしてならなかった。



「昨日午後いなかったし、そうなんじゃね?」


「いないほうがいいよな」



……やっぱり、わたしのことだった。

こういうときに限って、予想が当たってしまう。


耳を塞ぎたくても、恐怖で体が硬直してしまい、思うように動かせない。


心臓がギシギシ軋む。壊れかけたオルゴールみたいに、音が綺麗に奏でられない。



「てか、昨日のやばかったよね」


「矢崎さんの腕でしょ?」


「血が出てなかったってやつだよね?ちょー怖っ」



今度は、女子の会話だ。

何が面白おかしいのか、楽しそうに笑ってる。
……ううん、嗤ってるんだ。他でもない、わたしを。