不思議そうにしていると、わたしの左腕に刺さっていたガラスの破片が、琴平先生の手によって慎重に抜かれていく。



琴平先生はわたしの左腕をしばらく凝視したあと、時計を一瞥した。


わたしもつられて、時計を見る。



あ。

冬木先生に伝えることがあったの、忘れてた。


あと数分で昼休み終わっちゃうけど、間に合うかな。



「矢崎さんの左腕は、さすがにここではどうにもできないから、病院に行ってもらないといけないわね」


「はい、わかりました」


「でも、病院行きのバスは、六時間目が終わるころにはもうないのよ。だから、今から病院に行ってきてくれる?」



病院には来週の月曜日に行こうと考えていたし、冬木先生に伝える前でちょうどよかったけど……。


い、今から?



「午後の授業は……?」


「休むことになるわね。担任は冬木先生だっけ?わたしからちゃんと伝えておくわ」


「で、でも、」


「明日も学校あるし、左腕が使えなかったら不便でしょ?なら、さっさと治してきたほうがいいじゃない」



確かに、琴平先生の言うとおりだ。


利き腕がうまく使えないと、ノートもまともに取れない。人間関係はどうであれ、授業までついていけなくなったらどうしようもない。それだけは避けなければ。



「まあ、どうしても教室に戻って授業に出たいって言うなら止めないけど?」



教室に、戻る?
この状態のまま?

考えただけで、血の気が引いた。