怖くてたまらずこの場から走って逃げ出した。
涙があふれて、顔が歪む。
ねぇ。
わたしが、何をしたっていうの?
ただ、助けようとしただけ、なのに。
どうして、こんなことになっちゃうの?
いくら願ったって、孤独感が膨らんでいくだけなら、どうすればよかったの?
何もしなければよかったの?
本当に?
咲間さんを助けたことに、後悔はない。反省もしていない。
だけど。
だけど……っ!
無我夢中で走っていたら、いつの間にか保健室前に来ていた。
そういえば、右頬にガラスの破片がかすって、傷ついてたんだった。
絆創膏もらっておかないと。
目尻にたまった涙を拭って、保健室の扉を静かに開けた。
「失礼します」
中には誰もいなかった。
あれ?
保健医の琴平(コトヒラ)先生は?
いない……みたい。
どうしよう。勝手に絆創膏をもらっていってもいいのかな。
「琴平先生なら、さっきの騒ぎを聞いて飛んで行ったよ」
「え?」
誰もいないと思い込んでいたのに、どこからか声がした。
この声って……。
ベッドを囲っていたカーテンが、シャッ、と音を立てて開かれた。
「皆瀬くん……!」
「どうしたの、矢崎さん。怪我?それとも琴平先生に何か用?」
ベッドから出てきた皆瀬くんが、わたしに近づいてくる。