さっきのおばさんたちと一緒。

クラスメイトも、わたしを遠ざけている。



おかげで友達は一人もいない。


学校では、いつも、独り。




「矢崎莉子ってフツーじゃないんだろ?」


「その噂って実際どうなんだろうな」


「火のないところに煙は立たないって言うじゃん」




ざわり、と陰湿な視線がわたしの表面をなぞった。


震える肩を静めるように、反射的に俯く。



……あぁ、皆が、見てる。

煙たがってる。



やだな、怖い。

どうせなら、わたしを放っておいてくれればいいのに。
そうすれば気楽にいられるのに。


どうして見てくるの?




「――バケモノだっていう噂もあるよな」



誰かがボソッと呟いた声が、脳内でガンガン響いた。


やめて。
やめてよ。

苦しくて苦しくて、その苦しさが肥大化していって、わたしの心臓を押し潰す。


目をぎゅっと固く瞑って、現実から仮のシャットダウンをしたって、苦しさは変わらなかった。



わたしが一番、よくわかってる。



自分が、自分の左側が、“ヒト”じゃないこと。


フツーじゃない、バケモノなこと。



ちゃんと、わかってるから。


だから、お願い。

そんな視線で見ないで。



これ以上、わたしの心臓をえぐらないで。




本当にこの現状を脱却したいなら、俯かずに顔を上げればいい。
自分の口から噂の真相をはっきり言ってやればいい。


そしたら、もしかしたら。

誰か一人でも、わたしを受け入れてくれるかもしれない。


そう期待を込めて考えてる……けど。



どうしても、できない。