わたしの、噂。
わたしの、秘密。
それがこんな風にわたしを追い詰めるなんて、想像していなかった。
現実になんか、なってほしくなかった。
「本当だったら怖いわね」
「近づかないほうがいいわ」
コソコソ、コソコソ。
ああやって近づかずに、遠目から観察されて、わたしがどんな気持ちでいるかは完全に無視されてる。
もし、今ここでわたしが睨んだり反論したりしたら、あのおばさんたちはどうするんだろう。
できもしないことを頭の中でシミュレーションしても、ちっとも気分は晴れない。
ズキリ、と心臓が軋んで、危うく悲鳴を上げかけた。
こちらに引っ越してきてまだたった二週間なのに、もう数え切れないほど嫌な思いをしてる。
いいことを数えるほうが簡単で、早いくらいだ。
誰がこの噂を流したのか。
いつ、どこで、わたしの秘密を知ったのか。
あっという間に町全体に知れ渡ってしまった噂を、どうしたら消せるのか。
何も、わからない。
誰も、教えてはくれない。
おばさんたちの噂話をこれ以上聞きたくなくて、無意識に早足になっていた。
学校に着いても、居心地の悪さはなくならない。
むしろ学校のほうが居心地悪く感じる。
わたしが教室に入ると、決まって一瞬しん……と静まり返る。
違和感ありまくりの、不穏な沈黙だ。
その沈黙を気にしていないフリをしながら、廊下側の一番うしろにある自分の席に座った。
だんだんと静けさが消えていく。クラスメイトは最初小さな声量で、再びしゃべり始めた。
わたしに挨拶をしてくれる人は、いるわけがない。
クラスメイトは、変な尾ひれのついた噂を当然知っているのだから。田舎の人間ネットワークの性能が良すぎるせいだ。