えっへんとドヤ顔され、ポカンとするわたしをよそに、ひと呼吸置いて口を開いた。
「そのクッキーはね、莉子への『ありがとう』と『頑張れ』って気持ちを詰め込んだクッキーなんだよ」
「『ありがとう』はわかるけど……『頑張れ』って……」
「あたし、ずっと莉子の恋を応援してた。だけど、莉子が恋に苦しんでるところを近くで見て、今の応援じゃ全っ然足りないことに気づいたんだ」
そんなことない。足りなくなんかないよ。今までも、今もずっと、依世ちゃんの応援はちゃんと届いてたよ。むしろ足りないのは、わたし自身の努力のほうだよ。
その一心で首を横に振りかぶった。しかし、依世ちゃんは頑なに認めようとはしない。
学級委員を任されるほど責任感が強いのは知ってるけれど、わたしの想いまで背負い込んで、自分のせいにしなくてもいいんだよ。
「あたしにできることはなんでもしたかった。だから、昨日のお礼っていうのを口実に、クッキーを作ったの。『莉子、頑張れ』って気持ちを込めて」
ほら。やっぱり。
いつもわたしばっかり、助けられてる。
わたしにこのクッキーはもったいない。不釣り合いだ。
「『頑張れ』って言われても、もうフラれちゃったし……」
頑張ってもいいのか、わからない。何をしても鬱陶しく思われそうで怖い。
「でも、まだ好きなんでしょう?」
「……うん、好き」
ストン、と自然に落ちてきた。
そうだ。
わたしは、環くんのことが大好き。
それが、全てだ。
わたしは何をためらっていたんだろう。
恋をし続けてる限り、頑張る理由がある。意味が、あるんだ。