「皆瀬くんなら、今日は来てないみたいだよ」



わたしが訊く前に、依世ちゃんがそう言うから「はひっ!?」なんて馬鹿げたリアクションを取ってしまったじゃないか。

ついでに心臓も、ドキーッと大きく跳ねる。


誰もがエスパーになれるわけだ。


ニヤリと口角を上げる依世ちゃんに、むむっと唇を尖らせながらも、渋々開き直った。



「……お休み?」


「たぶんそうなんじゃないかな」



わたしより先に病院を出て行ってたから、てっきりもう登校してるのかと思ってた。保健室でサボってるのかな。



『ここ、俺のお気に入りの場所なんだ』



なぜ。
なぜ、今、あの寂れた公園を想起したんだろう。


なぜなんだろう。

環くんが独りで、あの公園に佇んでいるような気がするのは。



今すぐ会いに行きたい。



会って、“あのときの少年”との関係を聞きたい。環くんのことが知りたい。環くんの口から、直接。

会いたい……けど。


むやみに環くんの内側に立ち入って、また迷惑に思われたらどうしよう。挨拶すらまともに交わせなくなったらどうしよう。不安でたまらない。


臆病で弱虫な自分が、恐怖と闘っている。鈍くも鋭くもない予感とひしめき合いながら、わたしの足を竦ませる。



わたしが一番、よくわかってる。

秘密に触れられることが、どれだけ危うくて、壊れやすいのか。


あぁ、これだけは断言できる。できてしまう。
今のわたしは絶対、“今”を精一杯生きてはいない。