初めて見た。
おじいちゃんが、おばあちゃんの名前を呼ぶところ。
なぜかわたしがときめいてしまった。
「なんですか、おじいさん」
見つめ……いや、睨み合う二人。
睨み合いで負けたおじいちゃんは、プイッと顔をそらした。
「おじいちゃんは、おばあちゃんのどんなところを好きになったの?」
「……っ」
おじいちゃんは黙々と箸を進めるだけで、応えてはくれなかった。
怒ってるのだろうか。
そんなおじいちゃんを横目に、おばあちゃんはわたしにこっそり耳打ちする。
「照れてるんじゃよ」
え?照れてる?
試しにもう一度、おじいちゃんのほうをチラ見してみる。おじいちゃんの耳たぶは、珍しく赤くなっていた。
「本当だ」
わたしはおばあちゃんと顔を見合わせて一笑した。
二人は愛し合っているから結婚して、今まで仲睦まじく暮らしてきたんだろうけれど、今もずっとお互いがお互いに恋し続けてるようだ。恋と愛は違う。だからこそ、二人はとても幸せで、愛らしく感じる。
すると、おばあちゃんが思い立ったように「そうだ」と声を上げた。
「莉子ちゃん、アルバム見ないかい?」
その提案に、すぐ賛成した。
時間はまだちょっとある。
おばあちゃんとおじいちゃんの若いころの写真とか、お母さんとお父さんがわたしと同い年くらいだったころの写真とか見てみたい。おばあちゃんの話を聞いて、いっそう気になったし。
ご飯一粒残すことなく綺麗に食べ終えてから、おばあちゃんが居間にある棚からアルバムを取り出した。食器を下げたちゃぶ台に、大きくて重いアルバムが広げられる。
「わあ……!」
アルバムの初めのほうのページには、少し黄ばんだ古い写真が保存されていた。写真から鑑みるに、おばあちゃんとおじいちゃんの写ってるものだろう。
あ、この写真、高校生くらいかな。制服姿のおばあちゃんとおじいちゃんが、ピースしてる。
「おばあちゃん美人!おじいちゃんイケメン!」
おばあちゃんもおじいちゃんも、すっごく楽しそうだなあ。