正面には勿論、金髪+四人がいる。
「たぁ~。感動の別れだったなぁ、おい。涙がでてきたぜ」
わざとらしく、大げさに泣き真似なんかしやがる。
「さて、どうすんだ金髪。一気に来るか?」
「女みたいな顔して意外と好戦的じゃね~か」
「顔は関係ないし、好戦的でもない」
「じっくりいたぶってやるからよ、まずは一対一だ。まあ無理だと思うが、抵抗してみろよ」
「そうさせてもらう」
「いい返事だ。よし、お前行け。最初だからかるーくしてやれよ?」
最初の相手はモヒカン。下品に「へへへっ」と笑うと、指をバキバキ鳴らしながら歩み寄ってくる。
一目見ただけで分かる。こいつは、こいつ等はケンカ慣れしてやがる。それに対して俺はケンカなんて一度もない。格闘技だって観たことないレベルだ。
最初から結果なんて分かっている。もちろん俺のストレート負け。だから一気に、なんて言った。
でも……俺は、一発だけはお返しをしないといけない。もちろん、二人に怖い思いをさせた分だ。
だが……素人の俺がそれを実行するには、ある条件が整わないといけない。で、その条件を満たすため、俺はノーガードで突っ立っている。
「? 何やってんだ?」
当然、モヒカンは不思議そうな顔をする。だが、それも一瞬のこと。ヤツはニヤリとし右拳を作った後、ゆっくりと腕を引き――俺にパンチを打ち込む。
「おらぁ!」
「がっ!」
左頬を、激しい痛みが襲う。
覚悟していたものの、気を抜くと首ごと持っていかれそうな威力。慣れていない俺にはなおさら堪える。
しかし――。この瞬間こそが条件!
俺は殴られる前から準備していた右拳に力を込め、全力でモヒカンの頬に叩き込んだ。
「ぐぽっ!?」
恐らく、油断していたのだろう。モヒカンは悲鳴にも似た声を上げると、ヨロヨロしながら数歩下がり、崩れ落ちた。
「…………」
起き上がる気配がない。倒したのだ。
「お、おいっ」
自分で殴っておいてなんだが、声をかけてしまった。さすがに死ぬことはないが、大丈夫なのだろうか。
仰向けにしてやってもいいが、あいつらが勝手にするだろう。そう思っていた。が、だ。アイツらはなんと、笑っていた。
「ひゃはは。見たかよ? 『ぐほっ』だぜ」
「いやいや。ありゃ『ぐぽぅ』だった」
「そーかもなっ。しっかし、アイツもよえーなぁ」
……なんだ、コイツらは。
俺の目には、この光景が異常に見えた。どうして仲間がやられたのに笑っていられる。どうして、楽しそうにする。
俺には、苦痛にしか感じない。殴られてジンジンしている左頬より、心が痛い。
「……なあ。お前達は、仲間じゃないのか?」
無意識に、そんな言葉が出ていた。
「あ? よえーやつは仲間じゃねぇよ」
「……そうか」
「なんだその面、あんま調子に乗ってんじゃねーぞ! たく、このバカは邪魔だから誰か引っ張って来い」
「あいよ~」
奴の合図でモヒカンがずるずると引きづられ、空き地の端へ捨てられた。まるでゴミを扱うように。
「はぁー、仕方ね~な。次はお前行け。あれ、使っていいぜ」
「おう。OK~」
次の相手――スキンヘッドが金髪の後ろに置いてあった黒の大きなバッグを開き、中から『あれ』を取り出した。
「コイツを使うのは、久しぶりだ」
コンコンと叩くと空き地に響く金属音。『あれ』とは、金属バットのことだった。
「さ~て、てめぇの言う『仲間』のあだ討ちだ。覚悟しとけぇ」
見せ付けるように地面に振り下ろす。すると鈍い音と共に、地面にめり込んだ。
「……っっ。なんだよそれ」
おもわず、一歩後退してしまう。
まさか、ケンカで武器が出てくるとは思わなかった。しかもソレはところどころへこんでいて、こいつらは普段から使ってやがる……っ。
「お、どうした? こないのか?」
振りかぶったままじりじりと距離を詰めてくる。それにあわせて俺も、後退する。
こいつは、ヤバイ。俺の中の危険センサーが鳴り響いている。
金属バットなんてのを腕でガードしたら骨の一、二本は覚悟しないといけないだろう。おまけに、それでも止められる可能性はない。
となると、避けるしかないのだが……。スキンヘッドは扱いが慣れていて、スイングが早い。数回は避けれても、いずれ当たってしまう。
(逃げる……)
という選択肢は、ない。
もし逃げたら明日以降、愛梨達が酷い目に遭う。こういうヤツらは絶対に待ち伏せすると、俺が経験済みだ。
「おいおい、どうした? 逃げるのか?」
くっ、どうする……。どうする……っ。
何かっっ。何か、この状況を打破できることが――
「右に跳べっ!!」
不意に、声がした。
それが誰が言ったのか、分からない。もしかすると、罠かもしれない。
けれど俺は直感に従い、即座にその方向に跳ぶ。
「今のはっ。一体なんなんだっ?」
着地した直後、俺は急いで周りを見た。すると――数秒前まで自分が居た場所を、高速の自転車が通過。そのままスキンヘッドにぶつかった。
「ごべっ! ふがぇ……っっ!」
スキンヘッド野郎は抵抗もできず、ただ自然体で後方へ飛ばされる。そして音を立てて地面を滑ったあと沈黙し、さすがに今回は金髪達が駆け寄っていった。
「こ、これは……? 何が、どうなったんだ……?」
「いや~。クリティカルヒッツ!」
呆然としている俺の横に自転車が止められ、一人の男が降り立った。その男は、俺がよく知る人物。
「ま、正樹?」
「はい。正樹でございまーす☆」
悪友でクラスメイトの、木本正樹だった。
「たぁ~。感動の別れだったなぁ、おい。涙がでてきたぜ」
わざとらしく、大げさに泣き真似なんかしやがる。
「さて、どうすんだ金髪。一気に来るか?」
「女みたいな顔して意外と好戦的じゃね~か」
「顔は関係ないし、好戦的でもない」
「じっくりいたぶってやるからよ、まずは一対一だ。まあ無理だと思うが、抵抗してみろよ」
「そうさせてもらう」
「いい返事だ。よし、お前行け。最初だからかるーくしてやれよ?」
最初の相手はモヒカン。下品に「へへへっ」と笑うと、指をバキバキ鳴らしながら歩み寄ってくる。
一目見ただけで分かる。こいつは、こいつ等はケンカ慣れしてやがる。それに対して俺はケンカなんて一度もない。格闘技だって観たことないレベルだ。
最初から結果なんて分かっている。もちろん俺のストレート負け。だから一気に、なんて言った。
でも……俺は、一発だけはお返しをしないといけない。もちろん、二人に怖い思いをさせた分だ。
だが……素人の俺がそれを実行するには、ある条件が整わないといけない。で、その条件を満たすため、俺はノーガードで突っ立っている。
「? 何やってんだ?」
当然、モヒカンは不思議そうな顔をする。だが、それも一瞬のこと。ヤツはニヤリとし右拳を作った後、ゆっくりと腕を引き――俺にパンチを打ち込む。
「おらぁ!」
「がっ!」
左頬を、激しい痛みが襲う。
覚悟していたものの、気を抜くと首ごと持っていかれそうな威力。慣れていない俺にはなおさら堪える。
しかし――。この瞬間こそが条件!
俺は殴られる前から準備していた右拳に力を込め、全力でモヒカンの頬に叩き込んだ。
「ぐぽっ!?」
恐らく、油断していたのだろう。モヒカンは悲鳴にも似た声を上げると、ヨロヨロしながら数歩下がり、崩れ落ちた。
「…………」
起き上がる気配がない。倒したのだ。
「お、おいっ」
自分で殴っておいてなんだが、声をかけてしまった。さすがに死ぬことはないが、大丈夫なのだろうか。
仰向けにしてやってもいいが、あいつらが勝手にするだろう。そう思っていた。が、だ。アイツらはなんと、笑っていた。
「ひゃはは。見たかよ? 『ぐほっ』だぜ」
「いやいや。ありゃ『ぐぽぅ』だった」
「そーかもなっ。しっかし、アイツもよえーなぁ」
……なんだ、コイツらは。
俺の目には、この光景が異常に見えた。どうして仲間がやられたのに笑っていられる。どうして、楽しそうにする。
俺には、苦痛にしか感じない。殴られてジンジンしている左頬より、心が痛い。
「……なあ。お前達は、仲間じゃないのか?」
無意識に、そんな言葉が出ていた。
「あ? よえーやつは仲間じゃねぇよ」
「……そうか」
「なんだその面、あんま調子に乗ってんじゃねーぞ! たく、このバカは邪魔だから誰か引っ張って来い」
「あいよ~」
奴の合図でモヒカンがずるずると引きづられ、空き地の端へ捨てられた。まるでゴミを扱うように。
「はぁー、仕方ね~な。次はお前行け。あれ、使っていいぜ」
「おう。OK~」
次の相手――スキンヘッドが金髪の後ろに置いてあった黒の大きなバッグを開き、中から『あれ』を取り出した。
「コイツを使うのは、久しぶりだ」
コンコンと叩くと空き地に響く金属音。『あれ』とは、金属バットのことだった。
「さ~て、てめぇの言う『仲間』のあだ討ちだ。覚悟しとけぇ」
見せ付けるように地面に振り下ろす。すると鈍い音と共に、地面にめり込んだ。
「……っっ。なんだよそれ」
おもわず、一歩後退してしまう。
まさか、ケンカで武器が出てくるとは思わなかった。しかもソレはところどころへこんでいて、こいつらは普段から使ってやがる……っ。
「お、どうした? こないのか?」
振りかぶったままじりじりと距離を詰めてくる。それにあわせて俺も、後退する。
こいつは、ヤバイ。俺の中の危険センサーが鳴り響いている。
金属バットなんてのを腕でガードしたら骨の一、二本は覚悟しないといけないだろう。おまけに、それでも止められる可能性はない。
となると、避けるしかないのだが……。スキンヘッドは扱いが慣れていて、スイングが早い。数回は避けれても、いずれ当たってしまう。
(逃げる……)
という選択肢は、ない。
もし逃げたら明日以降、愛梨達が酷い目に遭う。こういうヤツらは絶対に待ち伏せすると、俺が経験済みだ。
「おいおい、どうした? 逃げるのか?」
くっ、どうする……。どうする……っ。
何かっっ。何か、この状況を打破できることが――
「右に跳べっ!!」
不意に、声がした。
それが誰が言ったのか、分からない。もしかすると、罠かもしれない。
けれど俺は直感に従い、即座にその方向に跳ぶ。
「今のはっ。一体なんなんだっ?」
着地した直後、俺は急いで周りを見た。すると――数秒前まで自分が居た場所を、高速の自転車が通過。そのままスキンヘッドにぶつかった。
「ごべっ! ふがぇ……っっ!」
スキンヘッド野郎は抵抗もできず、ただ自然体で後方へ飛ばされる。そして音を立てて地面を滑ったあと沈黙し、さすがに今回は金髪達が駆け寄っていった。
「こ、これは……? 何が、どうなったんだ……?」
「いや~。クリティカルヒッツ!」
呆然としている俺の横に自転車が止められ、一人の男が降り立った。その男は、俺がよく知る人物。
「ま、正樹?」
「はい。正樹でございまーす☆」
悪友でクラスメイトの、木本正樹だった。