五月――ゴールデンウイーク明け。
 俺はだらだらと下校していた。
 連休が終わり、一発目の学校というものは結構キツイ。体力的にもそうなのだが、とにかくこの時期からはやる気が起きないのだ。
「はぁ……。俺だけじゃなく、学校にも活気がないんだよなぁ」
 二年になりクラス替えがあったものの、にぎやかだったのは先月までのこと。学校中の生徒が新たな出会いにドキドキ、ワクワクしていたのだが、今は随分と落ち着いている。
 そんな雰囲気に影響されたのか、はたまた俺の性格なのか。とにかくダルい。
 このまま毎日グダグダしたい――。
 そんな思いが出てくるのだが、流石にそこまでだらけるのは如何なものか。一応、高校生は勉強が仕事なのだ。
 ということで俺は今日、気を引き締めるために歩いて帰っている。しかもいつもより時間が少し早いということもあり、普段は通らない道を使い、遠回りをしている。
 だが『通らない道』といっても、所詮は近所。新たな発見なんてあるわけもなく、もう半分程まで来てしまった。……ここまでは、あまり効果はないようだ。
「ここの角を曲がれば、家までもう少しか。帰ったら何をするかな……?」
 小道を通りながらそんなことを考えていると、ん? 騒がしい声が聞こえてきた。
「これは……。子供の、声か」
 この近くには小学校があるから、そこの生徒だろう。
 ゆっくりと角を曲がると、予想通り。少し離れたところに小学生達の姿を発見した。
「構成は男子が四人で、女子が一人か。へ~、モテモテだねぇ」
 そんなことを独りごちながら、トコトコ、トコトコ。「これも青春なのかねぇ」とかやや年寄り染みた発言をしていると、いや。どうやらソレは違っていたらしい。
「おいっ。なんか言えよーっ!」
 男子の一人であるツンツン頭小僧が、背の高い女の子の服を引っ張ったりしていた。そして、それが数回続いた後ソイツは――
「えいっ!」
 突然、女の子のスカートを捲る。
「きゃあ!?」
 そうなると当然その子は慌ててスカートを両手で押さえ、それを見ていた男子達はバカみたいに笑う。
「…………ふーん。これは…………まあ、いいか」
 こういうのは謂わば、小学生特有の戯れだ。俺はそう判断し、介入せず歩き続ける。
「ぁ~、そういや宿題が出たんだった。まずは、それを片付けないとだな」
 これまた独り言を呟きながら進み、小学生達の近くを横切る。
 すると丁度それを合図にスカート捲りという愚行は終わり、だがしかしだ。今度は、別の愚行が幕を開けてしまう。
「な、なに……するの……」
 ツンツン髪の指示で坊主頭の男子が、その子を羽交い絞めにしたのだ。
「やめ……っ。やめて……っ」
「あははっ、デカ女が暴れてるっ。みんなで怪獣を押さえ付けるぞっ!」
 その女の子は他の男子に比べても背が高く、恐らくは160センチを越えている。
 そんなだからツンツン髪は、背を使ってイジろうとしているのだろう。
「いやっ。はなして……っ」
「お前は脚を押さえろっ! 放すんじゃないぞっ!」
「やっ……っ。いや……っ」
「また怪獣が暴れようとしてるぞっ! みんな、力を抜くんじゃないぞっ!」
 必死に抵抗する女子の手足を、男子がニヤニヤしながら押さえる。
 これは本来かなり不埒な真似なのだが、コイツらから性欲は感じ取れない。こちらも子供によくあるイタズラなので、放っておく。

 つもり、だった。

 けれど俺は、聞いて、見てしまったのだ。

「や、やめてよ……」
 消えそうな声と、小動物のように小さく震える身体と、目に溜まる大粒の涙を。

 だから。
 俺は俺を聞いて見た瞬間――
「おい」
 反射的に、クソガキの腕を掴んでいた。