確かに日本でも家並みが古いのは少ない。

 たまたま郡上八幡は空襲らしい空襲もなかったし、横須賀のように米軍がいたりもしない。

 ナスチャは自分のルーツの話をし始めた。

 要約すると、彼女の母親は旧ソ連時代に父親とアメリカへ亡命も同然に駆け落ちして、それで生まれたのがナスチャなのだという。

「うちは祖父のときまでこの町やったらしいけど…」

 馨は過去はいちいち見ていない、というようなことを言ってから、

「どういうめぐり合わせか、たまたまうちらは縁あって出逢った」

 せや──と、馨はナスチャに、

「渡しとかなあかんもんがあった」

 そういうと、初音ミクがついた例の白いリュックサックをゴソゴソ探して、何やら小さな紙包みを取り出した。