そこへゆくと。

 馨の粟飯原家は菩提寺こそ岐阜にあるが、馨は生粋の横須賀育ちで、高校を出るまで神奈川を離れたこともなかった。

「馨も京都へ行くには行ったけど、てんで合わなかったみたいだし」

 光代にすれば、抜け切らない関西弁ばかりが違和感を感じているようでもあったらしい。

 それだけに。

(地元しか知らんのも、どないしたもんかいなぁ)

 というような本音があるのが、裏返せば馨のいつわらざる感懐であった。

 程なく。

 明日には成田に着きそうだ、というメッセージが来た。

 どうやら到着が明日の真夜中になるらしく、成田で一泊してからは京成線と京急線を乗り継いで横須賀へ向かうらしい。

「明後日の朝には横浜駅まで迎えに行かなあかんようやな」

 とだけ、馨は小さく言った。