光代はレシピを書いたノートを出すと、
「うちのは油をしっかりと湯抜きしてあるから、この子はお店のだと三個ぐらいしか食べないのに、うちの稲荷寿司だけはかなり食べるのよね」
最高で十七個も食べて、次の日に胃薬を飲んで学校に行った話をされると、馨は露骨に渋い顔をしてみせたが、
「ほら、アメリカとかって家族のつながりが日本より強いっていうから、こういう話題好きかなって」
もう私は七十過ぎた歳だし、目も耳も弱くなっているけど、と光代はナスチャに、
「馨は気難しいところがあるけど、あなたなら明るいから大丈夫かも知れないから、よろしく頼むわね」
翻訳されて理解すると、
「マカセトイテクダサイ!」
片言ながらどこで覚えたのか、というようなセリフで応えた。