ひとまずナスチャに住所のデータだけ教えてもらって打ち込むと、何やら宿泊施設らしいのだが、詳しく情報が載っていないらしく、ヒットしない。
「…これ、ちょっと行ってみな分からへんで」
ナスチャに教えると、
「それなら行ってみましょう」
というので、予備のピンクのハーフヘルメットをナスチャに渡して、馨は支度を済ませて、例のカスタムカブのリアシートにナスチャを乗せて出発した。
場所は比較的近い。
逸見からだと、田浦から西へ入り逗子の方へ少し走った辺りで、
「こんなとこに観光地なんかあったっけ?」
信号待ちで首を傾げながらも、スマートフォンのナビゲート通りに進んでゆくと、市境のあたりにピンクの建物が見えた。
「目的地周辺です」
と言われた視線の先には、サービスタイム五千円と書かれたホテルがある。
「これって…」
馨は嫌な予感しかしなかった。