気がつくと外は燈ともし頃で、
「今夜は開港祭の花火大会がある」
と翻訳アプリでナスチャに伝えてみた。
すると。
「見たい!」
ナスチャはテンションの上がった調子で声を弾ませてみせた。
そこで。
馨は中野からナスチャを伴って新宿まで出ると、湘南行の快速電車で横浜から、さらに桜木町の駅まで急いだ。
「赤レンガの近くなら見えるから」
みなとみらいまで出ると、花火は始まっている。
ドン、という音に向き直ると、鮮やかな光条を描いて打ち上がった牡丹の花火が、蒸し暑い横浜港の夜空いっぱいに広がりながら、瞬時に消えてゆく。
ナスチャと見た初めての花火である。