メッセージの交換のときに、アナスタシアが秋葉原に行きたがっているというような旨を馨は知っていたので、

「取り敢えずご飯食べたら、アキバ行こか?」

 翻訳のアプリを使って英語で訊いた。

「ahh nice」

 アナスタシアは笑顔で返した。

 そこへ。

「アナスタシアちゃん、食べる?」

 お構いなしに日本語で光代が黒豆だの筑前煮だのを、アナスタシアの前へ並べた。

「ベジタリアンだってきいたから、これなら大丈夫かなって」

 筑前煮は鶏肉の代わりに、大豆のひき肉風を鳥団子のようにしたものが入っている。

「Ohh!!」

 アナスタシアは瞠目しながら声をあげた。

 よほどの空腹だったのか、アナスタシアは目の前の取り分けられた筑前煮を夢中で食べ始めた。

「オイシイデス」

 片言ながら日本語で言った。

「Can you speak japanese?」

「Ahh…little」

 少しだけ話せるのが、光代や馨には救いでもあったらしい。