彼女が、来る。
しかも。
「ニューヨークの空港を出た」
というLINEのメッセージを、粟飯原馨が見たのは、明け方の四時前であった。
「えらいアクティブやな」
実家に戻ったばかりで、まだ京都での仕事モードの抜け切らない馨は、暗がりのベッドで小さく呟いた。
無理もないであろう。
彼女と会うのは今回が初めてである。
さらに言えば。
彼女は日本に来たことこそあるが、東京や京都を回った程度で、横須賀なんぞ来たこともない。
さらに余談ながら…。
彼女は日本語は片言しか話せない。
「そんなんで、よく来る気になったねぇ」
いきさつを聞いた母親の光代は、なかばあきれながらも、実家を出た姉のミカの部屋を客間として掃除をしてくれたらしい。
が。
「まさか馨に、アメリカ人の友達が出来るとはねぇ」
光代の言った台詞には解説が要る。