視線を感じたような気がして顔をあげると、妙につやつやした浅黒い小太りの男がいた。

歳は三十代前半くらい、死神と同じくスーツだけどまるで違う雰囲気。
死神が無機物なら、腐りかけの生ものみたいだ。
制服の少女とスーツの男という組み合わせに対する興味を隠そうともしない図々しさで、私と死神を交互に見ている。
古い油を使った下品な肉団子みたいないやらしさがある。

「あっ」

ブブンッとスマートウォッチが振動した。

幸先が良いと思っていたら、肉団子を押しのけるように大きな人影が立ちはだかった。
筋肉質な外国人の男が、スマートフォンを私に向けてくる。
被写体に許可を得るという感覚が皆無らしい。
それどころか、まるでステーキでも見るような顔でにやけている。

――お前は動物か。

傍若無人な振る舞いといい、本能丸出しのアホ面といい、一見立派な筋肉からしても原始時代から進化してない人間なんじゃないかと思う。

外国人は私を画像におさめると満足したのかどこかへ消えた。
やっぱり金曜午後のハチ公は大正解だった。

ブブンッ、ブブンッと次々カウントが進む。