もう死にたいことに間違いはない。
そんな私でも、自分の意志以外の何かに後押ししてほしい気持ちがある。
それにどうせ死ぬなら、ゲームで決めるくらい命を軽く扱いたい。

私の命なんて、人間なんて、その程度の価値しかないと行動することで、最後にして唯一できるこの世だか何かだかへの復讐になる気もする。

「あんた、ハンカチどこにやったの?」

小学三、四年生くらいの女の子が困った顔で母親を見あげている。

「ちゃんと持ってきたもん……」

母娘の背後、私の足元に真新しいピンクのハンカチが落ちている。

女の子は母親の袖をつかんで、ほかにどうすることもできないというようにゆすっている。
私はローファーでハンカチを踏みつけて、隠すように後ろに蹴った。
バッグから処方の向精神薬をだしてゴミ箱に捨てた。
スマートウォッチの画面を死神に見せると、死神は無言でスマートフォンの画面を並べた。

「それじゃあスタート」

スタートボタンを押すと、連動して時を刻み始めた。

画面にはゼロの数字が三つ並んでいる。