「君がレイか」

「本気で死に協力してくれるんですよね?」

主導権を握りたくて、上から目線ぎみに言ってみた。
死神はトートバッグのファスナーを引くと、私にだけ中が見えるように開いた。

「アラミド繊維のロープを用意した。細いが強靭で、君の体重程度では絶対に切れない」

死神の声は低く落ち着いている。

「滑りが良いためよく締まる。摩擦抵抗で失敗することもない」

「優秀なんですね。ロープも貴方も」

女子高校生の死に立ち会いたいわりに、女子高校生と対面した嬉しさや興奮みたいな感情は一切伝わってこない。
やっぱり死神には感情がないのかもしれない。

「それからリクエストのものだが、調べたところ飲みやすいという意見が多かった桃味を選んだ」

私は麻酔用にストロングゼロを頼んだ。
いくら途中で意識が途絶えるといっても、さすがに首を絞められたら苦しいはずだから。

「よく飲むのか」

「ええ、まあ。できる死神で安心しました」

実は飲んだことはない。
でも巷であれだけ絶賛されているストロングゼロなら、きっといい仕事をしてくれるに違いない。

「死神は私ひとりか」

バッグの中に見えたゴム手袋とタオルが生々しくて目を反らせた。

「そうです。仲間と楽しみたかったですか?」

「いや」