『恐らく確認した。背後にグレーのスーツの男がいたら私だ』
後頭部がむずむずするような感覚があって振り返ると、スーツの男が私を見おろしていた。
身体の芯をぞわりと寒気がはしる。
細身で身長は高め、髪は短く黒髪、セルフレームの眼鏡をかけた顎の細い男。
かろうじて見える目は切れ長で、感情がないかのような冷たさがある。
年齢は三十代……? 不詳。
死神の眼鏡には、制服の私がしっかり映り込んでる。
女子高校生の死の介助をしたがる男。
肥満で脂ぎった変態らしい容姿をイメージしていたら、想像上の変態よりも危険そうな本物の死神みたいな男が現れた。
――絶対に逃げられない。
そんな感覚がよぎる。自分で用意した死の介助人とはいえ背筋が冷えた。
でも最悪なのは自殺が未遂で終わることだ。
むしろ中途半端な変態親父より安心かもしれない。
確実な死をもたらしてくれると考えれば頼もしい死神だ。
そう考えたら、死神に対する恐怖は吹っ切れた。