死神なんていうとちょっとかっこよく聞こえるけど、実際は女子高校生の死に立ち会うことに興奮するただの変態男だ。
アングラ層や犯罪者が集まるサイトで自殺に協力してくれる男を募集したら、思った以上にメッセージがきた。
この国は病んでいる。
メッセージを送ってきた変態のうち数人とやりとりして、死神に相応しい人物をオーディションした。冷やかしやナンパ、痴漢ではなく、誠実に私の死に協力してくれそうな人物。
要するに一番ヤバそうな男を選んだ。
ラインは交換済み。
死神は見こんだとおり優秀で、私のラインを知った後も無駄な口説きやエロラインなんか一切送ってこなかった。
相手の身体的特徴は知らない。
当然のように金曜午後のハチ公前は雑多に人が多い。
「変態男」というくくりで見渡してみても該当しそうな男はいくらでもいる。
私の制服は比較的目立つデザインだ。
お母さんに似合うと言われたこの制服だけは好きだった。だから最後に着る服に選んだ。
それから変態男へのせめてものご褒美でもある。きっと制服のほうが喜ぶはずだ。
『ハチ公到着しました。黒髪ロングにグリーンのブレザー、黒縁眼鏡にマスクです』