いつからいたのか、物言わぬ表情で死神が私を見おろしている。
背筋が寒くなる。

お母さんの顔が大好きだ……、お母さんにもらった顔が大好きだ……、やっぱり私は……。

女子高校生の死に快楽を感じる死神に、カウントが進んだ原因を伝えることで果たして許してくれるだろうか。
戦わないといけない。

「死神さん、今のは違うの。嫌な顔って思ったわけじゃないの!」

「私は死神じゃない。西上だ」

言葉の意味が頭で繋がらず「へっ?」と間抜けな声が出た。

「ニシガミ……?」

ニシガミと名乗る死神は、胸ポケットに手を入れると焦げ茶色のパスケースのようなものを引きぬいて開いた。

縦に開かれたパスケースの上側には制服を着た人物の顔写真と名前、下側には金のエンブレムがついている。

「私は渋谷署生活安全課の西上だ」