センター街の手前にも大きな人の塊ができている。

スマートウォッチを確認すると、カウントはすでに“90”だった。
もうただ坂を上るだけでも確実だなと、死を実感しはじめる。
人ごみを振り返ると、少し離れたところに死神がいた。

死は確実に訪れる。
誰も死から逃れることはできない。
お母さんがそうだったように。

センター街の入り口を過ぎて、道玄坂の上に向かって進む。
手首の振動がつづく。
空が薄暗くなりはじめた。
文化村通りを渡りきってスマートウォッチを見ると“99”と表示されている。

反射的に俯いた。