私がメイクをしなくなって眼鏡で登校するようになってから、一人、二人と友達は離れていった。人間として私と付きあってたわけじゃなくて、私の外見をいろんな形で利用したかっただけなんだろう。

なにかを自分で考える子なんていなかった。
みんな一律で、”大丈夫“なポイントをコピペしたいだけ。
一緒にいて”大丈夫“に見せたいだけ。
そんなファッションのどこが楽しかったんだろう。

口では10代向けの啓蒙書みたいなことをかんたんに言う子たちだった。
誰も他人のことなんて考えてないのに。
それが友達と呼ばれるもの?
もしもそうならば、友達も価値なんてない存在だ。

女子高校生の一人が共感の言葉を大きな声で発すると、のっかるように同じ言葉がつぎつぎとかさなる。
一見楽しそうな顔たちの奥を想像したら息苦しくなった。

ブブンッ、ブブンッ、ブブンッ……。

信号が青に変わった。
見てるだけで苦しくなる劇団から離れられる。
顔を前に向けると、スクランブル交差点の三方向、それぞれの信号の下に顔の集合体が待ち構えているようで怯んだ。

ハチ公側の集団と一緒に前進をはじめると、真正面、ツタヤ側から押し寄せる集団の顔が突進してきた。
まるでリアルSNS。
有無を言わさずどっと押し寄せる顔、顔、顔……。

全員が私を死なせたいと思っているような錯覚におちいる。