それなのに。
この冬、ぼくだけは、眠れなかった。
ぼくだけが、うまくできないのだ。
ぼくはきっと、欠陥品なんだ。
あの上司が言うように。悔しいけど。
だめだ。完全に、眠るタイミングを逃してしまった。
ぼくは観念して、ベッドからそっと出た。
ひんやりとした床に足をついたぼくは、
散らばっていたコンビニ袋に足を取られ、派手な音を立てて転んだ。
しまった。
下の階の住人に、また怒鳴り込まれる。
深夜、ぼろぞうきんみたいに疲れきって帰ってきたとき、
ドアを開け閉めする音がうるさいとどなりこまれたのが、完全にトラウマになっている。
ぼくは反射的にその場でじっと身を縮めた。
けれど、下のドアが開く音に耳をすませている自分に、笑ってしまった。
1階の住人のことなんて、心配しなくていいんだ。
だって、今は冬眠期なんだから。
それでも、いつものくせで、ぼくは音を立てないよう、
暗いアパートの中をそっと動き、パジャマ代わりの黒いTシャツの上に
よれよれのスーツを羽織った。
わざわざスーツなんて着なくてもいいのに、
スーツ以外の服なんてしばらく着ていないから、探すのがめんどうくさい。
スーツの上にいつものコートを羽織ると、ぼくはアパートを出た。
除雪されずに深く積もった雪の中を泳ぐように、ぼくは眠れる街を歩いた。
この冬、ぼくだけは、眠れなかった。
ぼくだけが、うまくできないのだ。
ぼくはきっと、欠陥品なんだ。
あの上司が言うように。悔しいけど。
だめだ。完全に、眠るタイミングを逃してしまった。
ぼくは観念して、ベッドからそっと出た。
ひんやりとした床に足をついたぼくは、
散らばっていたコンビニ袋に足を取られ、派手な音を立てて転んだ。
しまった。
下の階の住人に、また怒鳴り込まれる。
深夜、ぼろぞうきんみたいに疲れきって帰ってきたとき、
ドアを開け閉めする音がうるさいとどなりこまれたのが、完全にトラウマになっている。
ぼくは反射的にその場でじっと身を縮めた。
けれど、下のドアが開く音に耳をすませている自分に、笑ってしまった。
1階の住人のことなんて、心配しなくていいんだ。
だって、今は冬眠期なんだから。
それでも、いつものくせで、ぼくは音を立てないよう、
暗いアパートの中をそっと動き、パジャマ代わりの黒いTシャツの上に
よれよれのスーツを羽織った。
わざわざスーツなんて着なくてもいいのに、
スーツ以外の服なんてしばらく着ていないから、探すのがめんどうくさい。
スーツの上にいつものコートを羽織ると、ぼくはアパートを出た。
除雪されずに深く積もった雪の中を泳ぐように、ぼくは眠れる街を歩いた。