カフェの扉を開けると、店の奥から聞き覚えのある声が聞こえた。
「いらっしゃいませ」
そうぼくに笑いかけたのは……
やっぱり七葉だ。
「お一人ですか?」
無言で頷いたぼくを、七葉が窓際の席へ案内した。
窓から見える景色を白で塗りつぶせば、あの日の景色になる。
ここはそう、あの日、二人でコーヒーを飲んだあの席だ。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ、えっと、ホットを一つ」
はい、と頷いた人懐っこい笑顔は、あの時と同じ。
厨房へ去りかけた七葉に、ぼくは勇気を出して、呼び止めた。
「あの」
七葉が振り向く。半分椅子から立ち上がったぼくは、恐る恐る呼びかけた
「七葉……?」