「おいしい?」

待ちきれずに、つい聞いてしまったぼくに、七葉はうん、と笑ってうなずいた。

「あ、ごめん」

「なんで謝るの?」

「いや、だって、無理やりおいしいって言わせたみたいになっちゃったから」

ぼくのこういうところが、上司や先輩をいらつかせてしまうのかもしれない。

「おいしいよ、本当に。こんなにおいしいの、初めて飲んだ」

「おおげさだよ」

おおげさじゃないよ、と七葉は怒ったような顔でぼくをまっすぐに見た。
まっすぐすぎる目は、今のぼくには眩しい。

太陽から目をそらすように、ぼくは窓の外に目をやった。
どこを見ても白で塗りつぶされた景色なのに。