家に帰ると母さんが玄関で買い物に行こうとしていた。
「買物行くけど、何食べたい?」
フランス料理でお腹いっぱいだ。
「夕ご飯はいらない」
「どうして?」
「お腹いっぱいなんだ」
「だから、どうして?」
「石野さんとフランス料理を食べたから」
今日は紀夫とクリスマス祭に行くと言って家を出た。
樹里のことは一言も言っていない。
「フランス料理? どういうこと?」
母さんは不審げな顔をする。
「怪我の慰謝料っていうことで、お兄さんに出してもらったって言って、石野さんがフランス料理を食べに連れて行ってくれたんだ」
「治療費をもらったのに。その上、フランス料理まで奢ってもらったの?」
母さんがあきれ返った顔をしている。
「石野さんが治療費と慰謝料は別だからって」
樹里のせいにした。
樹里ごめん。
「もう!! お弁当を作ってもらうわ、フランス料理を奢ってもらうわ。樹里ちゃんのところに迷惑かけっぱなしじゃない。何かお礼をしないと」
母さんが腕組みをする。
「樹里ちゃん、お正月は実家に帰るのかしら?」
「さあ、聞いてない」
普通は帰るよな。
「もし、樹里ちゃんに予定がなかったら、うちに来てもらえば?」
「うちに?」
「そう。正月にひとりぼっちっていうのは可哀想だし、隆司とのデートだけじゃつまらないだろうし」
残酷なことを平気で言う。
「あのねー」
どうせそうですよ。僕とデートなんかしてもつまらないでしょうよ。
親がそんなことを言うか。
「聞いといて」
僕の抗議の声を封じるように母さんは話を締めくくった。
「分かった。聞いておくよ」
不貞腐れた気分になったが、樹里が正月に来てくれるのは嬉しい。
明日の終業式の帰りにでも聞いておこう。
次の日、学校へ行くと、紀夫が嬉しそうにしている。
あれから渡辺さんと二人で回ったらしい。
「真紀と付き合うことになった」
樹里の言った通りだ。
「お前、渡辺さんのこと気が強いから嫌いだって言ってなかったか?」
「そんなこと言ったかな? 最初は気が強くていやだなと思ったんだけど、喋ると意外と可愛いところもあるんだ。それに関西の大学を受けるらしいから遠距離にもならないし」
紀夫がニヤケ顔になる。
一昨日まで落ち込んでいたのが嘘みたいだ。
「よかったな。ビデオの実践ができそうで」
「バカ。そんなことを大きな声で言うな。真紀に聞こえたらどうする」
慌てて紀夫が僕の口を押さえる。
「私に聞こえたら何かまずいことがあるの?」
いつのまにか渡辺さんが僕たちの横に立っていて、目を吊り上げている。
「いや、その……」
紀夫は下を向いてしまう。
さすがに渡辺さんにエロビデオの実践をしたいなんて言えないよな。
「渡辺さんに聞きたいことがあるんだ」
助け船を出してやる。
「珍しいわね。澤田くんが私に聞きたいことがあるなんて」
興味深げに僕を見た。
「樹里にプレゼントをしようと思うんだけど、何がいいかな? 女の子が何を喜ぶか分からないんだ」
母さんに何かお礼をしないといけないと言われて、何かプレゼントをしようと思った。
「そうね。アクセサリーが無難かな。でも、指輪は重いし、ネックレスもなんか首輪を嵌められるみたいで、私はいやかな。ピアスあたりでいいんじゃない。樹里、ピアスの穴を開けてるみたいだから」
「そうなの?」
樹里の耳を見たことはあるが全然気づかなかった。
「まったくどこ見てるのよ」
軽蔑するような目で僕を見る。
「なるほど。ありがとう」
聞いてよかった。自分で考えてたら何を買っていたか分からない。
「ねえ、紀夫。初詣一緒に行こうよ」
渡辺さんも紀夫を呼び捨てにする。
「うん。真紀は振袖を着るんだろう?」
「そうね」
「それは楽しみだ」
紀夫がニヤケ顔で渡辺さんを見る。
「今、なんかいやらしいこと考えているでしょう」
渡辺さんが紀夫を睨んだ。
「そんなことないよ」
紀夫は否定するが、あの顔は絶対Hなことを考えていた顔だ。
そうか。初詣か。
樹里も行くかな。樹里の振袖姿はきっと綺麗だろうな。
「買物行くけど、何食べたい?」
フランス料理でお腹いっぱいだ。
「夕ご飯はいらない」
「どうして?」
「お腹いっぱいなんだ」
「だから、どうして?」
「石野さんとフランス料理を食べたから」
今日は紀夫とクリスマス祭に行くと言って家を出た。
樹里のことは一言も言っていない。
「フランス料理? どういうこと?」
母さんは不審げな顔をする。
「怪我の慰謝料っていうことで、お兄さんに出してもらったって言って、石野さんがフランス料理を食べに連れて行ってくれたんだ」
「治療費をもらったのに。その上、フランス料理まで奢ってもらったの?」
母さんがあきれ返った顔をしている。
「石野さんが治療費と慰謝料は別だからって」
樹里のせいにした。
樹里ごめん。
「もう!! お弁当を作ってもらうわ、フランス料理を奢ってもらうわ。樹里ちゃんのところに迷惑かけっぱなしじゃない。何かお礼をしないと」
母さんが腕組みをする。
「樹里ちゃん、お正月は実家に帰るのかしら?」
「さあ、聞いてない」
普通は帰るよな。
「もし、樹里ちゃんに予定がなかったら、うちに来てもらえば?」
「うちに?」
「そう。正月にひとりぼっちっていうのは可哀想だし、隆司とのデートだけじゃつまらないだろうし」
残酷なことを平気で言う。
「あのねー」
どうせそうですよ。僕とデートなんかしてもつまらないでしょうよ。
親がそんなことを言うか。
「聞いといて」
僕の抗議の声を封じるように母さんは話を締めくくった。
「分かった。聞いておくよ」
不貞腐れた気分になったが、樹里が正月に来てくれるのは嬉しい。
明日の終業式の帰りにでも聞いておこう。
次の日、学校へ行くと、紀夫が嬉しそうにしている。
あれから渡辺さんと二人で回ったらしい。
「真紀と付き合うことになった」
樹里の言った通りだ。
「お前、渡辺さんのこと気が強いから嫌いだって言ってなかったか?」
「そんなこと言ったかな? 最初は気が強くていやだなと思ったんだけど、喋ると意外と可愛いところもあるんだ。それに関西の大学を受けるらしいから遠距離にもならないし」
紀夫がニヤケ顔になる。
一昨日まで落ち込んでいたのが嘘みたいだ。
「よかったな。ビデオの実践ができそうで」
「バカ。そんなことを大きな声で言うな。真紀に聞こえたらどうする」
慌てて紀夫が僕の口を押さえる。
「私に聞こえたら何かまずいことがあるの?」
いつのまにか渡辺さんが僕たちの横に立っていて、目を吊り上げている。
「いや、その……」
紀夫は下を向いてしまう。
さすがに渡辺さんにエロビデオの実践をしたいなんて言えないよな。
「渡辺さんに聞きたいことがあるんだ」
助け船を出してやる。
「珍しいわね。澤田くんが私に聞きたいことがあるなんて」
興味深げに僕を見た。
「樹里にプレゼントをしようと思うんだけど、何がいいかな? 女の子が何を喜ぶか分からないんだ」
母さんに何かお礼をしないといけないと言われて、何かプレゼントをしようと思った。
「そうね。アクセサリーが無難かな。でも、指輪は重いし、ネックレスもなんか首輪を嵌められるみたいで、私はいやかな。ピアスあたりでいいんじゃない。樹里、ピアスの穴を開けてるみたいだから」
「そうなの?」
樹里の耳を見たことはあるが全然気づかなかった。
「まったくどこ見てるのよ」
軽蔑するような目で僕を見る。
「なるほど。ありがとう」
聞いてよかった。自分で考えてたら何を買っていたか分からない。
「ねえ、紀夫。初詣一緒に行こうよ」
渡辺さんも紀夫を呼び捨てにする。
「うん。真紀は振袖を着るんだろう?」
「そうね」
「それは楽しみだ」
紀夫がニヤケ顔で渡辺さんを見る。
「今、なんかいやらしいこと考えているでしょう」
渡辺さんが紀夫を睨んだ。
「そんなことないよ」
紀夫は否定するが、あの顔は絶対Hなことを考えていた顔だ。
そうか。初詣か。
樹里も行くかな。樹里の振袖姿はきっと綺麗だろうな。