カーテンの隙間から差し込む優しい光と、少しうるさ過ぎる携帯のアラーム音によって僕は目を覚ました。手を伸ばしてアラームを止めてから、上半身だけ起こして周りを見る。六畳ほどの小さな部屋。中央に四角いテーブルが置かれ、隅のほうには大きな本棚の中に教科書や小説が並べられている。それと、僕が今寝ていたベッドがあるだけの、なんとも殺風景なこの部屋は、間違いなく僕の部屋だ。
 それから僕はもう一度寝ころび、仰向けになって真っ白な天井を眺めた。
 体はどこも痛くないし、手足も自由に動く。まるで昨日のことが夢だったかのように。まさか本当に昨日のあれは夢だったんだろうか……。いや、僕は昨日確かに、線路に飛び込んで自殺しようとしていた。それでなぜか成瀬さんがいて、僕を助けようとしてきて……。
「だめだ、ここから先が思い出せない」
 寝ころんだまま携帯を手に取り、今日の日付を確認する。
「四月九日か…………あ、っていうか今日、テストだ!」
 慌ててベッドから起き上がり、制服に着替え身支度を済ませる。そして、顔を洗おうと洗面台へ向かおうと部屋を出たところで、僕は家の中にある違和感に気づいた。
「音?」
 僕が暮らす家は二階建ての一軒家で、僕の部屋は二階にある。階段を降りるとすぐ右手側には、リビング、食堂、キッチンがまとまった空間があり、どうやら音はそこから聞こえているようだった。
「まさか……泥棒?」
 僕は一度自分の部屋へ戻り、ハサミを手にしてから、音をたてないように一段一段、階段をゆっくりと下りていく。頭は熱くなり、心臓の鼓動が速くなる。まるで、僕の体の中で爆弾が爆発し続けているかのように、体が内側から揺れている。
 それでも僕は、緊張と恐怖が入り混じった体を必死に前へ進める。
 階段を下り、扉の前に立った僕は、地獄への門を目の前にした気分だった。深呼吸を繰り返し、覚悟を決め、ドアノブに手をかけた。
 もう片方の手にはハサミをかまえ、もう一度深く深呼吸をし、そして僕は一気に扉を押し開けた。
 一瞬、時が止まったように感じた。
 呼吸も瞬きも、時間の経過すらも忘れていた。
 それほどまでに僕は、ただただ目の前の光景にすべてを奪われていた。