髭猫は、全部の足を延ばして横たわっている。
 両目は瞑ったままで、しっぽの先だけがピクピクと動く。
 完全に眠る気でいるだろ、この猫。何しに来たんだ。
「なんでも有りにすると、あとが大変じゃからの。ふぁぁー」
 と欠伸のついでに付け足した。

「その辺、はっきりしてくれないと、お願いできないんだけどなぁ」
 と皮肉たっぷりに言ってみる。
 どうせ聞いてないだろうけど。

 すると、髭猫は私の方に顔を向けて
「それなら、願いの言葉の中にネコが入っておれば良いことにしよう。とりあえず」
 と大義そうに口を動かした。

『叶えられる願いは三つ』
『お願いの言葉の中にネコが入っていること』
 纏めると、こういうことね。

 さっき、「人間が望むことなら大概できる」とか言っていたけど、願い言葉の中に
ネコを入れるとなると、大したお願いできないじゃない。
 これじゃ、さっぱり恩返しの意味なんか無いじゃないの。まったく、もう。

 って、怒ってもしょうがないか。夢だから…。
 そうだ。どうせ、夢なんだ。
 一夜限りの、夢物語。
 なんでも構わない。好き勝手なことを願おう。