人間が望むことなら、大概はできる。

 それなら…、
―私のことを好きな三笠くんを出して―
 と言おうと思ったけど、止めた。
 夢から醒めたあとに、余計に空しくなると思うからだ。

 それじゃ…
―翠と仲直りしたい―
 って…。
 この願いも、なぁ。
 夢の中だけ、仲直りしてもしょうがないし…。
 現実の翠との仲直りは、人頼みじゃなくて、自分の力でやらなくちゃいけないし。

「そうそう、忘れとった」
 髭猫が、ベッドの上で腹を出して寝転がり、横腹を前足で掻いている。
 本当にやる気あるのか、この髭猫?
「願いの数は三つじゃ。気前いいじゃろ、儂って」
―ああ、そうですか。どうせ、夢ですからねぇ―

「それと…」
―まだ、あるの? 夢のくせに諄《くど》いなぁ―
「願いの内容は猫に関係すること。これ大事なことだから」
「えーっ? 猫に関することって、どういうこと?」
「猫に関することは、猫に関することじゃよー」
 と髭猫が腹這いでノビをしながら喋る。
 遊んでるんじゃないの、この猫。