ドスン。
 誰かとぶつかった。
「ご、ごめんなさい」
 慌てて頭を下げる。
 考え事をしながら歩いていて、前を見ていなかった。
 いや、それとも意識が一瞬跳んでいたのか…。

 そもそも私、何を考えていたんだっけ…。
 うたた寝から覚めたようで、記憶がはっきりしない。
 えーと…。何だっけ…。
 そうだ、思い出した。
 三笠君に、彼女がいるらしい事が分って、落ち込んでたんだっけ。
 ああ、思い出すんじゃなかった。胸が痛くなる。

 気を取り直して、再び歩き出す。
 そりゃあね、私だって。三笠君と親しくなった自分を夢見ることだってあるよ。
 おしゃべりしたり、映画みたり、遊園地いったり。
 壁ドンされたり、背伸びしてキスしたり。
 空想のなかではね。
 でも、現実には三笠君と何の話をすれば良いのも、見当がつかないでいる。
 はぁ…。溜息がこぼれ出る。まるで、体中が溜息で埋め尽くされてるみたいだ。
 彼女さんが居るのを承知で告白すべきか。
 それとも、思いを胸の中にしまったまま、消え去るべきか。
 何度目かの堂々巡りを繰り返す。