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「アホが。」

課題を書く時の葛藤を真哉に笑い話として休み時間の間に話したら、そう言って呆れられた。

「椅子から落ちただけでバカにアホって言われたくなーい」

割と本気で真哉が呆れていることに傷付き、ムッとして、苦笑しながらそう返した。

それでも真哉の表情は全く変わらず、何故か急に恐くなって、すみません、と小さく謝った。

「椅子から落ちたからアホって言ってるわけじゃないんだよ」

私が謝ったことに少し焦ったらしく、真哉は私の方に体全体を向け、言葉の意図を解き始めた。

彼の注意が完全にこちらを向いている。

「なんでわざわざ一番を思い出そうとしてるの?」

「だってそういう課題じゃん。」

主旨の見えない質問に、私は即答し、首をかしげた。

そんな私を見て、真哉が項垂れるようにため息をついた。

諦められてるようで、なんだか腹が立つし、虚しくなる。

「無理に思い出すとショック起こすかもしれないからやめろって言われてるだろ」

ギリギリ周りには聞こえない声量で、俯いたまま、囁くように言った。

『周りに、自分が思い出せない時期のことを尋ねると、患者さんによっては、パニックを起こす方もおられるので、無理に思い出そうとしたりしないでください。』

真哉の言葉から、白い天井とともに、誰かのそんな話を思い出した。

あれは確か。。。

「でもこういう場合、後遺症は薄れていくこともあるって言ってなかった?」

「それは、ちょっとずつ自然に思い出してくるってことだろ?無理矢理思い出すことが危険なことには変わりない」

そっか、そっちが後遺症だったんだ。

でも、なんでだめなんだろう。

人に話してもらえば、それで徐々に思い出すはずなのに。

その時期の記憶は、そんなにショックを受けるような内容なのだろうか。

もしかして、今までで一番ショックを受けた出来事は、本当にこの期間中にあったのだろうか。

無性に悲しくなってきて、俯き気味に正面に向き直り頬杖をつくと、ちょうど鐘が鳴った。

先生が小走りに教室に入ってくる音がして、誰かが「あー走った」と指摘し、クラスが笑った。