……←❤︎→……
いつもの喫茶店で、オレンジ色に染まり始めた店内を眺めながらアイスコーヒーのストローを口につけた。
向かいでは、窓の外を眺めながら真哉が鼻歌を歌ってる。
この喫茶店は、学校からも図書館からも近くて、放課後すぐはだいぶ混んでる。
でも、放課後の波が収まって、閉店にはまだ間のある晴れた日の夕方は、ガラガラの店内に夕日が差し込んで、店の雰囲気がノスタルジックになる。
その感じが私も真哉も好きで、頻繁に二人で立ち寄ってる。
ふと夕日を浴びた真哉の顔が見たくなって、窓の方をみた。
真哉は普段よりも穏やかな表情を浮かべて、窓に寄り添うようにくっついて雲を見ていた。
この時間帯にこの喫茶店に来ると、よくこの顔になるのだけど、私は真哉の表情の中でこの顔が一番好き。
いつもいつもこの表情の時はしばらく顔を見つめるんだけど、毎回、気づかれたら恥ずかしいな、と思って目を逸らす。
今日も例外ではなく、そう思って真哉が見ている雲の方を見上げた。
薄い雲がまばらに広がり、ピンク色になっている。
もう少し分厚い雲だと明暗があって綺麗なのだが、空相手に文句は言えないし、今も十二分綺麗だ。
私はたまに横目で真哉を見ながら少しずつ空と雲の色が変わっていくのを観ていた。
すると、ドアについたベルがカランコロンと音を立てた。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの内側に座っている店員が言う。
入店してきた客は立ち止まっているらしく、足音がしない。
気にせず、雲を見上げ続けていた。
「山渕さん?」
しかし、入ってきた客は、注文よりも先に私の名前を呼んだ。
声の主を見るために振り向くと、スポーツバッグを肩から下げた永原さんが立っていた。
バスケ用のサイズの大きな運動着の上からでも、スタイルの良さはよくわかった。
「あ、御波くんも。」
後から真哉のことに気付いたように真哉の名前を呼んで、私の向かいに目を向けている。
その顔は、店がいつもよりくらいせいか、うっとりしているようにも見えた。
真哉にその目が向けられるのが嫌で、スポーツバッグを見て思いついた疑問をそのまま声に出した。
「永原さん、部活の帰り?」
「うん。」
私が話しかけると、いつものエネルギッシュな表情に戻って、答えてくれた。
答えてくれたのはいいものの、そこから先の「へー」以上の会話が思い付かない。
永原さんは、そのまま近くのカウンター席に腰を下ろし、スポーツバッグを隣の席の上に置いた。
真哉は反対側の窓を見るふりをしながら、チラチラと永原さんを見ている。
私は俯いて、ほとんど氷だけになったアイスコーヒーを見つめた。
外の光は、もう店内を照らすには弱くなりすぎたことに店員が気付いたのだろう。
さっきまでついていなかった喫茶店の明かりが、今は氷に反射している。
いつもの喫茶店で、オレンジ色に染まり始めた店内を眺めながらアイスコーヒーのストローを口につけた。
向かいでは、窓の外を眺めながら真哉が鼻歌を歌ってる。
この喫茶店は、学校からも図書館からも近くて、放課後すぐはだいぶ混んでる。
でも、放課後の波が収まって、閉店にはまだ間のある晴れた日の夕方は、ガラガラの店内に夕日が差し込んで、店の雰囲気がノスタルジックになる。
その感じが私も真哉も好きで、頻繁に二人で立ち寄ってる。
ふと夕日を浴びた真哉の顔が見たくなって、窓の方をみた。
真哉は普段よりも穏やかな表情を浮かべて、窓に寄り添うようにくっついて雲を見ていた。
この時間帯にこの喫茶店に来ると、よくこの顔になるのだけど、私は真哉の表情の中でこの顔が一番好き。
いつもいつもこの表情の時はしばらく顔を見つめるんだけど、毎回、気づかれたら恥ずかしいな、と思って目を逸らす。
今日も例外ではなく、そう思って真哉が見ている雲の方を見上げた。
薄い雲がまばらに広がり、ピンク色になっている。
もう少し分厚い雲だと明暗があって綺麗なのだが、空相手に文句は言えないし、今も十二分綺麗だ。
私はたまに横目で真哉を見ながら少しずつ空と雲の色が変わっていくのを観ていた。
すると、ドアについたベルがカランコロンと音を立てた。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの内側に座っている店員が言う。
入店してきた客は立ち止まっているらしく、足音がしない。
気にせず、雲を見上げ続けていた。
「山渕さん?」
しかし、入ってきた客は、注文よりも先に私の名前を呼んだ。
声の主を見るために振り向くと、スポーツバッグを肩から下げた永原さんが立っていた。
バスケ用のサイズの大きな運動着の上からでも、スタイルの良さはよくわかった。
「あ、御波くんも。」
後から真哉のことに気付いたように真哉の名前を呼んで、私の向かいに目を向けている。
その顔は、店がいつもよりくらいせいか、うっとりしているようにも見えた。
真哉にその目が向けられるのが嫌で、スポーツバッグを見て思いついた疑問をそのまま声に出した。
「永原さん、部活の帰り?」
「うん。」
私が話しかけると、いつものエネルギッシュな表情に戻って、答えてくれた。
答えてくれたのはいいものの、そこから先の「へー」以上の会話が思い付かない。
永原さんは、そのまま近くのカウンター席に腰を下ろし、スポーツバッグを隣の席の上に置いた。
真哉は反対側の窓を見るふりをしながら、チラチラと永原さんを見ている。
私は俯いて、ほとんど氷だけになったアイスコーヒーを見つめた。
外の光は、もう店内を照らすには弱くなりすぎたことに店員が気付いたのだろう。
さっきまでついていなかった喫茶店の明かりが、今は氷に反射している。