だんだんと陽が地に迫っている。
私の低い身長が、黒い影の中では、三メートル先まで伸びている。

私は自転車を押しながら、一度自分にストップをかけた。
バッグを肩に掛け直してから、自転車に乗る。

篠原先生、なんで泣いてたんだろう。

こんな事、考えていたら怜にバレてしまう。
怜にバレないように考え事をするのは、不可能なんだろうか。


「・・・・・・」


何故か分からないが、怜は考え事で私の考え事については気にしていないみたいだ。

ずっと俯いたままで、時折首を傾げたり、指で頬の下をかいたりしている。

頬杖さえもつけないような状況で、私は怜を気にせず自転車を漕ぐ。

それにしても、あの時の頭ナデナデは、一体なんだったんだろうか・・・・・・。
普段の怜は、頭を撫でるどころか、私を褒める事も、私が喜ぶような一言もない。

むしろ、されても引くかもしれない・・・・・・。

でもあの時は・・・・・・、何故か、ズキリとして、体が火照ったみたいに熱くなった。


少女漫画で言う、‘ 恋 ’ってやつなのか・・・・・・!?

そんなはずない、と、横に何回も首を振る。

脚を思い切り上げ、スピードなんて考えずに、自転車を漕いだ。