「あーっ! 李依ぃ、昨日休んじゃうから寂しかったんだぞーっ!」


クラスがある階の廊下に出ると、ハルトを連れた百香の姿があった。

百香は、私をゆび指して私に抱きついた。
私は少し抵抗を覚えつつも、ハンドクリームと髪のオイルの香りが付いている百香を抱き返す。

ハルトは、私を見向きもせずに言った。


「じゃあ俺先行ってるから」


そのまま、私が歩いてきた道をハルトが早めに歩いて行った。


「ねぇ、大丈夫だったぁ? もー、いつもあたしより早く来てた李依が来ないなんてびっくりした」


「うん、ごめん! ・・・・・・あ、あのさ、さっきハルトと何してたの?」


「え? あー・・・・・・内緒? あっ、別に変な事してないからね!」


私からの質問に、百香は手を左右に振り回した。
完全に何か隠しているのがバレバレだ。
否定の仕方も、まるで好きな人がバレた時と同じような否定の仕方だ。


私は、そんな百香と離れて、教室に入る。
いつも通りの騒がしさ。

女子は飽きずにクラスの子の名前を出してこそこそと愚痴を話しているが、話の内容が筒抜けだ。

誰の名前かも私は今聞こえている。
その子は、端の席で、一人で窓の外を見ていた。
きっと、窓を見ているフリをして、誰か来てくれないかと少し期待している事だろう。

私も中学生の時は友達が少なかったせいで、よく一人で窓の景色を見たり、手を組んで寝ているフリをしていた。

それも、後ろの方で昨日のドラマで出ていたアイドルの話で盛り上がっていた子達に、話しかけてけれないかと少し期待した。

そして、高校の入学式。

隣の席にいた女の子が、私の寝癖を見て笑った。
しかし、ムカつくような笑い方ではなく、交友関係を築けるような笑顔だった。


『ねぇねぇ聞いてー! なんか、ハルトに告白されて、付き合う事になっちゃったの!』


ある日、教室に入ってきた百香が、私にそれを伝える。

私はその時、目の前が真っ暗になった。

少し気になっていた人に彼女が出来た。
それは、私にとってとてもショックを受けた。


「ハルトを・・・・・・渡したくない・・・・・・」


欲が強い事は自分でも分かっている。

でも、そんなの止められっこない。