予想通り激しい頭痛が来る。

目を開けた瞬間には、もう怜は見えなかった。
頭の中に帰ってきたのだ。


「おつかれ。 どうだった?」


私は何も気づいていないフリを怜には振る舞った。


「普通に喋っただけ。 特に大した事はしてねぇよ」


「大した事じゃなくても、ちゃんと話せて良かったね」


私は、公園の自動販売機を覗きに行った。

その中に、いつもハルトが飲んでいるミネラルウォーターがある。
私がよく飲むコーヒーのメーカーのものもあったが、たまには、そう思い、冷たいと書かれてあるボタンを押した。


久しぶりに飲む自販機の水。

夜目が覚めた時に飲む水道水とは、また違う味がするように感じる。

一気に飲まず、一口ずつゆっくり口につけた。


「あれ、百香から返事来てる・・・・・・」


百香とのメール画面からずっと放置していたスマホを見ると、私がさっき送ったメールの後に、百香が新しく送ったメールがあった。


『あ〜良かった! 安心したよ〜泣』


その後に、泣いているウサギのスタンプ。

何だか、クスッと笑ってしまうような文面だ。

怜はこのやり取りを見て、


「本当は体調すっげーいいくせにな」


と言う。


「し、仕方ないでしょ。 こうしなきゃ怜はあの人に会えなかったんだからね」


私も怜を真似て嫌味ったらしく言ってやった。
それでも全然効いてないみたいだけど。


私は、いつの間にか空になっていたペットボトルを、手のひらでぐしゃぐしゃに壊した。


「よっ」


腰を浮かせて、ベンチの隣に設置されていたゴミ箱の中にペットボトルを捨てる。


「おい、そろそろ帰ろうぜ。 ここにいても暇なだけじゃんか」


「帰ったって同じだよ。 お母さん家にいるんだよ。 入れないに決まってるって」


だんだんと冷静に交わせるようになってきた自分に拍手をした。

やれば出来るじゃん、私。


ふふっと小さく笑ったら、怜が「気持ち悪っ!」


と突っ込んできた。