私は今、スラム街のような路地を自転車付きで迷っている。
「怜、この辺りなんだよね・・・・・・」
「うーん・・・・・・あっ! 奧出れるぞ、多分あの辺だろ!」
怜が、路地の向こうを指で指した。
隙間から、この辺りとは違う雰囲気の明かりが漏れている。
私は人と人の間をぐんと通り過ぎて、その明かりを目指した。
「あっ、ここ・・・・・・みたい」
ちょうど出た所に、住宅街が並んでいた。
スマホのマップを見ると、私がいる、目の前を指している。
「ここだな」
私の家より少し大きいくらいで、かなり新しい。
きっと新築だ。
私は朝日をめいっぱい感じながら、自転車を壁側に寄せた。
インターホンを押すって、こんなに難しい事だっただろうかと、迷うくらい私は今緊張している。
珍しく怜までも緊張している様子で、眉間にシワを寄せていた。
ふぅーと、大きく深呼吸をして、右斜め前にある小さなボタンを押した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私と怜は、しばらく固まる。
しかし、誰も出なかった。
「怜、留守みたいだよ」
「ああ。 待ってみるか」
私は、近くにあった大きな公園まで向かった。
うん、ここなら家も見える。
ここの公園は中央に噴水があり、緑がたくさんな公園だ。
今は平日の午前だから、子どもはいない。
私は今日、人生初のサボりというものを実行した。
母親は当然学校に行っていると思っているだろう。
しかし、私だって色々考えたんだから。
朝に先生に電話をして、休む事を伝えた。
もしもサボりが親にバレたら大変だ。
「ふぅー・・・怜、いつ帰ってきそう?」
「多分夕方だと思う。 いつもそんくらいの時間に帰ってたから」
ふぅんと、風のような返事をした。
やっぱり、怜はその人と知り合いのようだ。
私の勘は当たっていた。
「あれ? メール・・・・・・?」
現在授業中にも関わらず、スマホが小刻みに震えた。
『李依が休みなんて珍しいじゃん、なんかあった?』
『おーい、もしかして昨日体調良くなかったとかー?』
『昨日もし体調悪かったならごめんよー』
同じような文面のメールが三件来ていた。
全て一人のものだ。
こういう喋り方の友達は私の中では一人だけ。
百香だ。
ハルトから来ていないか確認するも、メールは来ていなかった。
当たり前か・・・・・・。
「・・・・・・って、おい! もう帰ってきてるぞ!」
怜が、今気づいたみたいに私に叫んだ。
怜の視線を追うと、OLのようなファッションの女性が、こちら側の道に行くための信号を渡ろうとしていた。
あの人だろうか。
ズキッ!
「うっ・・・・・・また・・・・・・」
二度目の頭痛で、少しは慣れたものの、まだ痛いのは当然だ。
私はベンチに手をついて、前かがみになった。
血管が破裂したような衝撃と痛み。
最初は、病気だと思った。
しかし、この前ので気づいた。
きっとこれは、怜が私の頭の中から抜ける瞬間なんだ。
怜が現実世界に行くには、私を通してじゃないと行けない。
それを実践するには、私の頭痛が必要なんだろう。
「李依! ごめんな、ちょっと行くね。 俺一人で大丈夫だから」
これも怜の声のものだ。
私は何も言えず、治まっていく頭痛を噛み締めながら、怜が遠ざかるのを見ていた。
「怜、この辺りなんだよね・・・・・・」
「うーん・・・・・・あっ! 奧出れるぞ、多分あの辺だろ!」
怜が、路地の向こうを指で指した。
隙間から、この辺りとは違う雰囲気の明かりが漏れている。
私は人と人の間をぐんと通り過ぎて、その明かりを目指した。
「あっ、ここ・・・・・・みたい」
ちょうど出た所に、住宅街が並んでいた。
スマホのマップを見ると、私がいる、目の前を指している。
「ここだな」
私の家より少し大きいくらいで、かなり新しい。
きっと新築だ。
私は朝日をめいっぱい感じながら、自転車を壁側に寄せた。
インターホンを押すって、こんなに難しい事だっただろうかと、迷うくらい私は今緊張している。
珍しく怜までも緊張している様子で、眉間にシワを寄せていた。
ふぅーと、大きく深呼吸をして、右斜め前にある小さなボタンを押した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私と怜は、しばらく固まる。
しかし、誰も出なかった。
「怜、留守みたいだよ」
「ああ。 待ってみるか」
私は、近くにあった大きな公園まで向かった。
うん、ここなら家も見える。
ここの公園は中央に噴水があり、緑がたくさんな公園だ。
今は平日の午前だから、子どもはいない。
私は今日、人生初のサボりというものを実行した。
母親は当然学校に行っていると思っているだろう。
しかし、私だって色々考えたんだから。
朝に先生に電話をして、休む事を伝えた。
もしもサボりが親にバレたら大変だ。
「ふぅー・・・怜、いつ帰ってきそう?」
「多分夕方だと思う。 いつもそんくらいの時間に帰ってたから」
ふぅんと、風のような返事をした。
やっぱり、怜はその人と知り合いのようだ。
私の勘は当たっていた。
「あれ? メール・・・・・・?」
現在授業中にも関わらず、スマホが小刻みに震えた。
『李依が休みなんて珍しいじゃん、なんかあった?』
『おーい、もしかして昨日体調良くなかったとかー?』
『昨日もし体調悪かったならごめんよー』
同じような文面のメールが三件来ていた。
全て一人のものだ。
こういう喋り方の友達は私の中では一人だけ。
百香だ。
ハルトから来ていないか確認するも、メールは来ていなかった。
当たり前か・・・・・・。
「・・・・・・って、おい! もう帰ってきてるぞ!」
怜が、今気づいたみたいに私に叫んだ。
怜の視線を追うと、OLのようなファッションの女性が、こちら側の道に行くための信号を渡ろうとしていた。
あの人だろうか。
ズキッ!
「うっ・・・・・・また・・・・・・」
二度目の頭痛で、少しは慣れたものの、まだ痛いのは当然だ。
私はベンチに手をついて、前かがみになった。
血管が破裂したような衝撃と痛み。
最初は、病気だと思った。
しかし、この前ので気づいた。
きっとこれは、怜が私の頭の中から抜ける瞬間なんだ。
怜が現実世界に行くには、私を通してじゃないと行けない。
それを実践するには、私の頭痛が必要なんだろう。
「李依! ごめんな、ちょっと行くね。 俺一人で大丈夫だから」
これも怜の声のものだ。
私は何も言えず、治まっていく頭痛を噛み締めながら、怜が遠ざかるのを見ていた。