私の鼻に、百香のハンドクリームの匂いがまとわりつく。
最近、男子を意識して、ハンドクリームを少し高い物に変えたらしい。
「あーあ、最近全然アオハルしてなーい。 ねぇ李依、今日のカラオケ行く? クラスの子ほとんど行くって言ってるやつ」
百香が私の机から身を乗り出して私に問いかけた。
行きたいのは行きたいけど、やっぱりクラスの子がたくさん来るのは、私にとってかなりハードルが高い。
みんなの前で歌を歌うのも、あまり上手くないから結構恥ずかしいし、邪魔になってしまうかもしれない・・・・・・。
「ねぇお願い! 李依が行くならあたしも行くからさ! 李依が来ないと面白くないよぉ」
手を叩いてお願いしている百香に、何だかここで断るのはちょっと可哀想かな、と思い、少し不安ながらもオッケーした。
「っしゃあー! じゃあ今日放課後ね! そのままカラオケの店の前で待ち合わせだから、ちゃんと着いてこいよ〜?」
スキップしながら他の女の子達に報告しに行っている百香に、後ろめたい気持ちが出てくる。
私がいなくても、百香は他の子と楽しそうにしてるんだったら、別に私を連れていかなくていいじゃん。
どうせまた人数合わせに使われただけだ。
「お前そういうとこ暗い」
怜に頭をぐりぐりされる。
仕方ない。
産まれた頃からこういう性格なんだよ。
「美化委員、先生に呼ばれてるだってよ。 行こうぜ」
同じ委員会の中田君が、私に向かってそう言う。
「あ、うん! 分かった」
私は急いで席を立ち、廊下を出た。
「・・・・・・なぁ、成瀬さんって、ハルトと付き合ってるんだよな?」
「・・・・・・うん」
「なんか最近さ、あんまりハルトの口から成瀬さんの話出てないんだよ。 何かあったの?」
「えっと・・・・・・うん、まあ色々と、ね」
ハルトと私の間で起こった事なんて、他の人に知られる意味はない。
だいたい、ハルトといつもそこまで話してないような人間に、ハルトの事を色々語られるのはちょっと嫌な話だ。
「よし、じゃあ頼むぞ。 重いから気をつけてな」
担任からダンボールを私が一つ、中田君は二つ渡された。
「大丈夫? なんかごめんね、私一つで・・・・・・」
ダンボールよりも重い空気を背負っている私は、よろよろと不安定な体を自分で支えていた中田君に話しかけた。
「いいよ別に。 普通こういうのって男が持つもんだろ」
あはは、と、なんの笑いか分からないが、声に出して笑った。
でも、怜が現実世界に存在しているなら、絶対に手伝ってくれないだろうな・・・・・・。
なんといってもあの自己中心的な態度だから。
・・・・・・ん?
そういえば、なんか幼稚園に行った時、確か頭を撫でられ・・・・・・たよな!?
怜ってやっぱりちょっとは優しかったりして。
「・・・・・・わっ!?」
考え事に集中し過ぎて、階段から足を一段踏み外した。
「うわっ! 成瀬さん、大丈夫!?」
中田君は、右手に荷物、左手に私を抱き抱えていた。
「あ、あり・・・がと・・・・・・」
ビックリし過ぎて私は荷物を二つ重ねて持ってしまった。
ふぅ、こんな所をハルトに見られたら完全に誤解されてしまう。
私達は、階段をゆっくりと上がって教室へと戻った。
最近、男子を意識して、ハンドクリームを少し高い物に変えたらしい。
「あーあ、最近全然アオハルしてなーい。 ねぇ李依、今日のカラオケ行く? クラスの子ほとんど行くって言ってるやつ」
百香が私の机から身を乗り出して私に問いかけた。
行きたいのは行きたいけど、やっぱりクラスの子がたくさん来るのは、私にとってかなりハードルが高い。
みんなの前で歌を歌うのも、あまり上手くないから結構恥ずかしいし、邪魔になってしまうかもしれない・・・・・・。
「ねぇお願い! 李依が行くならあたしも行くからさ! 李依が来ないと面白くないよぉ」
手を叩いてお願いしている百香に、何だかここで断るのはちょっと可哀想かな、と思い、少し不安ながらもオッケーした。
「っしゃあー! じゃあ今日放課後ね! そのままカラオケの店の前で待ち合わせだから、ちゃんと着いてこいよ〜?」
スキップしながら他の女の子達に報告しに行っている百香に、後ろめたい気持ちが出てくる。
私がいなくても、百香は他の子と楽しそうにしてるんだったら、別に私を連れていかなくていいじゃん。
どうせまた人数合わせに使われただけだ。
「お前そういうとこ暗い」
怜に頭をぐりぐりされる。
仕方ない。
産まれた頃からこういう性格なんだよ。
「美化委員、先生に呼ばれてるだってよ。 行こうぜ」
同じ委員会の中田君が、私に向かってそう言う。
「あ、うん! 分かった」
私は急いで席を立ち、廊下を出た。
「・・・・・・なぁ、成瀬さんって、ハルトと付き合ってるんだよな?」
「・・・・・・うん」
「なんか最近さ、あんまりハルトの口から成瀬さんの話出てないんだよ。 何かあったの?」
「えっと・・・・・・うん、まあ色々と、ね」
ハルトと私の間で起こった事なんて、他の人に知られる意味はない。
だいたい、ハルトといつもそこまで話してないような人間に、ハルトの事を色々語られるのはちょっと嫌な話だ。
「よし、じゃあ頼むぞ。 重いから気をつけてな」
担任からダンボールを私が一つ、中田君は二つ渡された。
「大丈夫? なんかごめんね、私一つで・・・・・・」
ダンボールよりも重い空気を背負っている私は、よろよろと不安定な体を自分で支えていた中田君に話しかけた。
「いいよ別に。 普通こういうのって男が持つもんだろ」
あはは、と、なんの笑いか分からないが、声に出して笑った。
でも、怜が現実世界に存在しているなら、絶対に手伝ってくれないだろうな・・・・・・。
なんといってもあの自己中心的な態度だから。
・・・・・・ん?
そういえば、なんか幼稚園に行った時、確か頭を撫でられ・・・・・・たよな!?
怜ってやっぱりちょっとは優しかったりして。
「・・・・・・わっ!?」
考え事に集中し過ぎて、階段から足を一段踏み外した。
「うわっ! 成瀬さん、大丈夫!?」
中田君は、右手に荷物、左手に私を抱き抱えていた。
「あ、あり・・・がと・・・・・・」
ビックリし過ぎて私は荷物を二つ重ねて持ってしまった。
ふぅ、こんな所をハルトに見られたら完全に誤解されてしまう。
私達は、階段をゆっくりと上がって教室へと戻った。