「ごめんっ!!」
私はハルトの手を掴んで言い放った。
あっ・・・・・・と、私は自分のおかした事に漫画でよくある、背景に線がたくさんなだれたように心の中でうなだれた。
「えっと・・・・・・それは、どういう事?」
前半少し驚いた表情をしたが、だんだんと冷静さを取り戻したような顔に戻っていった。
「え・・・・・・あっ・・・・・・えっと、その」
私は戸惑いを隠せずに、「えーっと」 とか 「あー・・・」など、変に動揺した声を出してしまう。
「それ、別れて欲しいって意味?」
「えっ! いや、ちがっ・・・・・・私は、別れて欲しいなん、て・・・」
「・・・・・・そう」
何分かの沈黙が続く。
時間が止まって、今この世界には私達だけみたいだ。
いや、私は一人変なやつを居候させている訳だけど・・・・・・。
何か言わなきゃ・・・・・・。
「あ、の、この前の・・・・・・私だから・・・・・・」
「叫んだやつ?」
静かな空気をいくらか保とうと、私はこくりと首を縦に一回動かす。
ビックリするだろうと思って言った言葉に、ハルトは一声もあげずに、
「あんなの、最初から李依だって分かってたよ」
と言った。
最初から・・・・・・分かってた・・・・・・。
それって・・・・・・。
「いつか・・・ら?」
私は恐る恐る聞いてみる。
「呼ばれた時も、あ、李依だなって思ったし、李依が知らないって言った時も嘘ついてるなって。 だから正直に言ってくれるのを待ってた」
あっけらかんとした表情に、私は今度こそ泣きそうになる。
という事は、私がハルトに嘘をついていた事も、ハルトは分かっていたという事だ。
私、今すっごくバカでまぬけだ・・・・・・。
出てきそうになる涙を必死に隠そうとして、顎と首のあたりがキーンと痛くなる。
ダメ、ここで泣いたら本当にバカになる・・・・・・。
「・・・・・・」
ハルトが、私を遠慮して何も言ってこないのに、さらに私は悲しくなった。
「おーい、ハルト! いつまで休憩してんだよ、早く練習再開するぞ!」
ハルトの親友と呼ばれる男子が、中庭の方から来て、私なんか見えていないという風にハルトに話しかける。
「おう、今行く。 ・・・・・・じゃな」
ハルトは、そのままその男子に手を引かれて校舎を出ていった。
一瞬目があった事に胸がどくんと跳ねた。
「お前最近すっげー泣いてる」
怜が私のブサイクな顔を見て、笑いを堪えるように言った。
こういうのが、やっぱり怜の優しさなんだろうな・・・・・・。