今日は晴天だった。
朝の目覚ましは小鳥の鳴き声で、とても優雅に起きたはずだ。

それなのに・・・・・・。


「昨日の、優美か?」


目の前には、そこだけ雨が降っているような顔のハルトがいた。

また家の門にもたれかかって私を見つめる。

そして、見つめられている私は固まった。
透き通っている二つの瞳は、私の体を硬直させた。


「ねぇ、聞いてるんだけど」


ハルトの今朝の第二声目に、私はビクリと肩を震わせる。

昨日ちゃんと予想すべき事だった・・・・・・。

いや、予想しようと思って机に向かった時、生で見たかったアニメが今から放送される事を知ったのだ。

もちろん、私はアニメを優先する・・・・・・。

むしろあの後も、ハルトの事なんてちっとも考えていなかった。


「昨日の・・・・・・って・・・?」


声の震えを出来るだけ抑えて聞いてみた。
これで逃れられるわけがない事を分かってはいるものの、やっぱりそう簡単に答えられるはずがない。


「昨日俺ん家の前で俺の名前呼んだの、優美だろ」


ほとんど間髪を入れずにハルトが言った。


「何それ、そんなの、知らない」


口の中に溜まってねばねばしていた唾を飲み込んだ。
二人だけのようなその空間に、その音は大きく鳴った。

私の唾を飲む音が聞こえていたのかもしれない。


「あっそ」


ハルトは相当機嫌が悪いという顔で、半分諦めたような顔をした。

ハルトがいつもと同じ、早いペースで反対側の道を歩くのを確認してから、私はほっと小さく息を地面に落とした。


「お前、なんで正直に言わねぇんだよ」


怜までもが、私を一斉攻撃してくるなんて・・・・・・。

まあ、いつもの事だけど。


「仕方ないでしょ。 だいたい怜があんな事言わなきゃ私はこんな目に合ってないんだからね」


私も怜に対し、攻撃をした。


「断れば良かったのに」


胸の前で大きく腕を組んだ怜が言い放った。
当然の話だ・・・・・・。

でも、私はあの時断れなかった。

もともと断れない性格なのもあるし、もうどうでもいいやって思う事も多々あるけど、これだけの胸の圧迫感と、怜の圧力で何も言えなかったのだ。

きっと、私だろうが誰であろうが、怜の頼みを断る人はそうそういない。


ていうか、断れば良かったって何?

もし私がそうしていれば、怜の欲望は叶えられなかった。

今叶ってはいなくても、私が少し我慢すればいい話。

じゃあ、怜はあの時私が断っても何も思わなかったの?
そんな訳ないじゃん。

絶対悲しそうな顔するじゃん。

絶対私に文句言うじゃん。


私は、どうすればいいの?