教室は、東京なみのうるささだった。

男子達は、男子同士で戯れているし、女子は愚痴っていたりしている。

もちろん私は百香の隣にいた。


「ねぇー、最近どうよ。 ハルトとは。 なんかあんまり喋ってないじゃん」


百香が、私の机の前にあった椅子にまたがって、私に訊ねる。

相当私は顔が引きつっていただろうな・・・・・・。


「あ、うん・・・・・・普通」


あぁ、普通だったらあんな会話しないって・・・・・・!

第一、朝の挨拶も交わさないなんて、どんだけ静かなカップルなんじゃい!

私の前に置かれたネコのペンケースを握りしめた。


「えぇー! つまんないの! キスとかしないわけ?」


「すっ、するわけないでしょ」


「はあぁ!? まだ何もしてないの? もう、何してんのよ、あんた達のカップルは!」


ハルトにも聞こえそうな大きな声で、苦痛の悲鳴をあげた。


「声デカいって!」


口元に人差し指を当てて、しーっという仕草を表した。

百香はまだ不機嫌そうにぷーっと頬を膨らました。
こういう可愛い仕草を、男子は喜ぶんだろうか。

HRのチャイムが鳴り、百香は私から遠い自分の席まで戻って行った。

それを確認して、私はナギの名前を頭の中で呼ぶ。


「なんだよ。 お前の方から俺を呼ぶなんて、珍しいな」


嬉しさのかけらもない笑みを浮かべて、私を見つめる。


‘ ねぇねぇ、男の子って、可愛い事する女の子とか好きなんだよね ’


最近、話さなくても頭の中で思うだけで、ナギに伝わるという事が分かった。

なので、学校や公共の場では声に出さないでおこうと、心に決めたのだ。

例えば、学校で一人でぶつぶつ言ってるやつなんて、ただの変人になってしまう。


「んあ、別に俺はなんでもいい」


は?


「お前のマネ」


やけにニヤニヤしながら話すなぁと思えば、そういう事だったのか・・・・・・。


「あいつめ・・・・・・」


つい声が出てしまった。

それに、反応した隣の席の男の子が、不審そうに私を横目で見た。