完全女物の傘が、ハルトの左の手のひらから出てきた。

右手には自分の傘。


も、もしかして、ホントに迎えに来てくれたって事?


「あり・・・がと・・・・・・」


明らかに遠慮してしまっている自分がいる。

せっかくハルトが朝早くから持ってきてくれたのに、私ってなんて酷いやつなんだろう。


私は、ハルトの斜め後ろをコソコソと歩いた。
ハルトは、私のペースに合わせてくれているようだった。

しかし、私はまたもや母親と同じく素っ気ない態度を取ってしまう。
ハルトの隣に並ぶ事はいつまでもなく、だんだんと距離を離した。


「・・・・・・なぁ、なんで隣歩かないの?」


いい加減、というように後ろを振り返った。目を細めて、私を見ている。


「・・・・・・ハルトの後ろを歩きたい・・・から・・・・・・」


なんだか訳の分からないような説明を、数歩前にいるハルトに言った。

ハルトはきっと、全然理解しようとしていないだろうな・・・・・・。


「それと優美さ、俺の事嫌いなの? 別れたいって事か?」


「え」


乙女らしくない声が、私の口から出る。
そして、にこりともしないハルト。

これじゃまるで恋愛映画の映画の撮影じゃん。


「・・・・・・分からな、っい」


とりあえずどちらでもない返事をと思って口に出すと、思わず舌を噛んだ。

幸い血は出なかったが、噛んだ痛みが残った。


「そっか」


今度は長い沈黙と共に、ハルトの表現が難しい顔がついてきた。

そして、ハルトは水溜まりを避けるように歩き始めた。

私は、今度こそ後ろをついて行く事も出来なかった。