リビングは、散らかっていた。

まるで戦場だ。


「あ、優美おかえり。 ちょっとこの子達の片付け、手伝って」


「え、なんで私が・・・・・・?」


「お姉ちゃんでしょ、手伝ってあげるくらいできるわよ」


お母さんは、そう言ってキッチンに向かった。

もう、なんで私が・・・・・・。


「えー、ねぇねはいやぁー。ママがいいー!」


妹が私に言った。

ムカッと来て、何も手を付けないで階段を上がった。

母親の怒りを含んだ声が、二階にまで届く。

どうして私じゃダメなの・・・・・・。
ハルトも、結局は百香を選ぶんじゃない。

そんなのだったら、もう誰にも頼ったりしない。

これ以上、傷つきたくないよ・・・・・・。

カーペットに、一粒の涙が落ちた。



あれ・・・・・・私、泣いてる・・・・・・。



ぽたぽたと、次々涙が落ちていく。
何とか嗚咽を堪えながらも、近くのタオルケットに顔を埋めた。

後ろから見れば、倒れている人のようだ。

ベッドに手をついて、眠るような体勢をしている事だろう。


「お前、ぶっさいくだな」


これまでの一時始終を見ていた怜が、声を挙げた。


「うるっ・・・・・・さい、よぉっ・・・・・・」


しゃっくりみたいな嗚咽が混じりながらも、無邪気に笑う怜に反撃する。

あぁ、怜って、なんて幸せそうな可愛い笑顔を見せてくれるのだろう。

私しか見た事のない顔?

いや、元幼稚園通いの人だから、それは分からないか。
私は勝手な妄想に浸る。


わっ、私、何考えてるの!?


不覚にも、怜の事を可愛いなんて思ってしまう私が嫌いだ。

ハルトと付き合っているのに。

いや、もうハルトは私なんて見ないだろうな。
あんな事されたら、当然だ。



もう、別れよう・・・・・・。



ハルトとは、やっぱり百香がお似合いだよ。